最高の美、銀座タワーで

ジョルジオ・アルマーニ氏に聞く［２］

2007/11/14 　産経新聞東京朝刊　by 黒沢綾子

過酷なブランドビジネスを勝ち抜いてきた、強気で冷静な経営者の顔とは別に、言葉の端々にデザイナーとして、職人としての矜持がのぞく。

「時代に寄り添う新しさは必要。一方で自分が好きなもの、独自性やスタイルを大事にしたい。時々、トレンドにとらわれてしまわないよう自ら戒めることもある」

アアルマーニのスーツは１９７０〜８０年代、女性の社会進出を後押しした。脱構築的で流れるようなシルエット、「グレージュ」と呼ばれる落ち着いた色合い、虚飾のないシンプルなデザインは、流行を超えたスタイルを築いた。でも、最近のコレクションを見ると、女らしさや華やかさが増しているようだ。

「かつて私が取り組んだのは、男性と同じように働く女性に“スーツを着せる”ことだった。当時は家、仕事場、夜のパーティー用と着替えるのが当たり前だったからね。でも今は、少しドレッシーなワンピース１着で昼も夜も済ませることが多い。社会と女性のライフスタイルの変化を考えると、こうなったんだ」

積極的なブランド戦略とは矛盾するようだが、「本当はロゴではなく、ものを見て判断してほしい」と話す。

引退については「全く考えていない」という。「いつか“私の”アルマーニでなくなる日も来るだろう。でもその前に、やるべきことがたくさんある」

「仕事すなわち人生」と言い切る男のオーラは、半端ではない。

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