生まれたときから有名人だった。その少女も、もう20歳。この7、8年は濃密だった。映画、CM、歌、ドラマ、舞台…できることは何でもやった。走りすぎたかもしれない。

「20歳になって楽になりました。幼いころから大人としゃべる機会が多くて、バランスが取れなくなっていたかも。私という入れ物はちっちゃいのにボキャブラリーは豊富でなくちゃいけない、みたいな。サイズが合っていませんでしたね」
神田正輝・松田聖子元夫妻の1人娘。この世に誕生した瞬間からマスコミのフラッシュを浴び、幼稚園、小学校と進学するたびに注目された。両親が有名人であることを認識したのは「幼稚園の卒園式のとき」だという。
12、13歳で芸能活動を始めたのは「自分でやりたい」と思ったから。15歳で歌手デビューしたときもそうだ。「やはりお母さん(昔はママと呼んでいた)が歌手という家庭環境から潜在意識はあったんだと思います」。しかし、デビュー後も母の話題はつきまとう。比較される。うんざりしない?
「さすがにそこまでは言わないけど、取材を受けていて、相手の視線が私の目を通り越しているなと思ったときは悲しい。敏感になっていたことは確か。私の話をちゃんと聞いて!って感じ」
そんなジレンマも、いまは笑ってさらりと話す。18歳から20歳まで1年半の活動停止期間があった。恋をしたことで母との確執があったとも伝えられたが、事実としても思春期の娘を持つ家庭ではどこにでもある話だろう。いまは仲良く祖母、母と一緒に暮らす。
詩を作り出す才能があり、ミュージカルが大好きな彼女はやはり、歌や舞台に活動の場を求める。11日に東京オペラシティ・コンサートホールで開かれるウィンドブロウ・コンサート「風の便り 手紙 今伝えたい言葉(うた)がある」に参加する。ベテランの舞台俳優らに交じって、憧(あこが)れの大地真央の持ち歌「今宵満月」をソロで、ほかに「見上げてごらん夜の星を」など5、6曲を歌う。
「個人のコンサートは経験してなかったので本当にうれしいです。日本語にこだわりたいという趣旨の公演で、美しい言葉をつづった子守歌のような真央さんの曲を歌えるなんて光栄です」
昔は「歌が好き」と声高に言えなかったという。いまは素直に言える。10月には21歳。可能性はまだまだ秘められている。