−−つまり、指が届かないために楽譜どおりに和音を押さえられない場合もあったということですね。
そうです。加えて、ピアノの演奏には音量を必要にされる場合もありました。そのためには体格、あるいは体力も必要で、その点でも私は悩みました。そんなとき、ちょうど高校3年生のときでしたが、ピアノの先生からチェンバロを弾いてみないかといわれて。
−−チェンバロの鍵盤のほうが小さいのですか?
そうです。1mmぐらいでしょうか狭いんです。
−−1mmってたいした違いじゃないんじゃないですか?
でも、1オクターブ(鍵盤8つ分)以上になれば1cmになるんですよ。実際、私の手でもチェンバロなら1オクターブ届く。
−−その以前にチェンバロを弾いたことは?
いえ、私も実際には見たことすらなくて。初めて弾いたときは、すごく驚きました。音がよく響くんですよ。それをコントロールするのは初心者には難しいと思いました。だけど同時に、この楽器でなら私の手でも好きな表現ができる。もっと勉強したいと考えたんです。実技のうえでも役に立つだろうとチェロの歴史にも興味を持ちました。
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−−なるほど響きがいいわけですか。
ただ、初心者だときれいに響かない。力の抜き具合で音が変わってしまうんです。
−−力の「入れ具合」ではなく「抜き具合」なのですね?
そうです。最初はピアノと同じ鍵盤楽器じゃないかと思っていたら、きれいな音が全然でない。それでも、先生からは「ふつう人ならばもっと苦労するけれど、あなたは飲み込みが早い」といわれて、「私に向いているのかもしれない」と考えました。
−−きれいな響きが出せるまでにどのぐいらの時間がかかりましたか?
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「チェンバロ・レボリューション」(キング・レコード) |
うーん。一応、それなりの音が出せるまでに1年ぐらいかかったかな。
−−では、このCD「チェンバロ・レボリューション」についてうかがいます。どんなCDなのでしょう?
前述のようにチェンバロは、ピアノが出てきてから廃れるのですが、その後もチェンバロのための曲はいくつも書かれているんです。それも、ラベル、ショスタコービッチなどの作曲家たちがものしています。
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