−−すると、このアルバムの曲はそのころから書きためていたもの?
そうですね。17歳のころに書いたものもあれば、4、5年前に書いたものもあるという具合です。書きためたものの中から選んだんです。
−−だけど、このアルバムは1曲目から最後の曲までを通してひとつの世界観で貫かれているつくりになっていますよね?
明確な概念に基づいた作品を意図したわけでもないのですが、こんなふうにしたいという考えはあり、それに見合う歌を、書きためておいた中から選びました。で、どんなふうにしたかったかというと、思春期のころの私の思い出を描きたかった。思春期のころの情景を描きたかった。なるべく聴く人の共感の得られそうな思い出につながる歌を選びました。歌詞についていえば、言葉で遊ぶ。これはフランス独特の文化かもしれませんね。歌詞でいろいろと遊びながらも、とても深いことを意味している部分もある。フランスではこういう歌詞じゃないと認められませんから。
−−フランスは、歌詞が非常に重要視されますよね。時に重きをおきすぎて音楽としてはどうなのかと首をかしげたくなるときもありますが…
ただ、いまは古いシャンソンの時代と違って、音楽としても豊かじゃないとだめなんですよ。それが現代のシャンソン。
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−−そもそもシャンソンって現在のフランスではどういう位置づけになっているのですか?
いまのフランスの軽音楽事情を説明すると、まずラップ。そしてロック。そしてシャンソンがあってバリエテ(歌謡曲)があります。シャンソンは、いわゆる作詞作曲家兼歌手(シンガーソングライター)による音楽を指すと考えていただければいいかと思います。
−−なるほど。そうすると、あなた自身もシャンソンに分類されるわけですね?
そうですね。私は実際、1930−40年代の古いシャンソンも好きなんですが、旋律や和音(コード)など音楽としての部分も重視しながら取り組むのが現代のシャンソン。そう考えていただくといいでしょうね。
−−なるほど
いまもシャンソニエにいくと昔ながらシャンソンをうたっている歌手はいますが、CDを出してやっていこうという場合は、新しい手法で歌を作らなくてはなりません。フランスでは70年代にはミッシェル・ポルナレフのように歌詞のみならず素晴らしい旋律を生み出す作詞作曲家兼歌手がいたことはご存じかと思いますが、ここ数年で再び彼のようなあり方が見直され、ひとつの大きな流れを作り始めているんですよ。

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