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石井啓夫の“新人公演”を見た!
宙組「維新回天・竜馬伝!」本公演しのぐ笑いに酔う
1月19日(金) by 石井啓夫(演劇コラムニスト)
舞台を見ながら、マンガを繰るような面白さに酔った。 愉快なビジュアル性や吹き出しの面白さを想起させる過激なセリフなど…石田昌也コメディーの本来の姿がなぞられていて、幾度も爆笑させられた。

ちょっと複雑な心境でもある。本公演では石田流コメディーが中途半端に演出されているため、喜劇の中で浮かぶ竜馬像というものが新人公演で余計に鮮烈に輝いたからだ。新公メンバーのリラックスしたアイデア芝居が楽しいノリを深めたともいえる。

ノリ過ぎの感もあったが、新公はそれでもよいとわたしは思う。こればかりは、ほぼ熱心な歌劇ファンのための舞台と考えていい。今後の演技や舞台度胸やあらゆる勉強のために、楽屋落ちも結構、過激な演技も許される。客席も本公演との比較の中で優劣とは別次元の楽しみ方をしているのだ。

鈴木圭演出と新公メンバーの息が合っていた。本公演の場割りをカット無しで上演したのも、この作品は根が軽く楽しい喜劇であることを証明した。

現時点で研7(以下、同じ)の鮎瀬美都がしっかりした芝居ぶりで寺田屋女将お登勢(本役・邦なつき)を演じ、全員を引っ張った。

主要役は研6、7が占め、新公主役2度目の早霧せいなの坂本竜馬(本役・貴城けい)が本役に負けぬ美男ぶり。歌も所作もすっきりきれいに決めて、笑い過多の展開の中、10場薩長同盟のシーンでは、西郷隆盛(暁郷=本役・寿つかさ)と桂小五郎(凪七瑠海=本役・北翔海莉)に和解を勧めるセリフ回しが、熱情溢れる芝居で思わずホロリとさせた。日本の将来に夢を馳せる竜馬の心を掴んだ心意気である。

ただ、熱が入ると言葉に唾が絡む癖がある。早口になるためだ。少しの注意が必要だ。しかし、オープニングからエピローグまで、白の長マフラー巻いた姿も潔く、一輪の椿の花枝を片手にタイトルナンバーを唄うところが美しく涼しい。見た目十分な二枚目である。

お竜(本役・紫城るい)で受ける和音美桜は初ヒロイン。いまや、歌劇でその名を轟かす名シンガーだが、センター芝居の難しさを今回知った筈。本公演での千葉佐那子役は華がついて、武家娘の凛然とした美しさを旨く出していたが、主演となると早霧とのセンター芝居や銀橋上のやりとりに堅さが出た。

しかし、歌唱の自信が芝居の落ち着きへとすぐ、繋がってゆくだろう。期待である。なにしろ、歌唱シーンの心情溢れる唄いぶりは客席を桃源郷に導く。お竜の歌が1曲だけというのが、和音がヒロインだっただけに惜しいばかりだ。7場羽織と袴の「あなたの心が判らない」は見事だった。

後、目についたところでは、八雲美佳の勝海舟(本役・立ともみ)が立派な江戸武士。達者さが地味に滑らぬように。暁の西郷も豪胆な作りでよい。凪七の桂も、本公演で目立つ役を得ている強みで芝居に華を見せる。顔立ちの派手さも天性だ。藤咲えりの幾松(本役・音乃いづみ)も清潔な色香が滲む。

徳川慶喜(本役・蘭寿とむ)の春風弥里、中岡慎太郎(本役・大和悠河)の蓮水ゆうや、沖田総司(本役・早霧せいな)の七海ひろき、千葉佐那子(本役・和音美桜)の咲花杏らがかっちり役を生きていた。

お蝶(本役・美羽あさひ)に廻った花影アリスは新公ヒロイン経験者で、それぞれの出番でも物腰に華がある。見せどころを心得て立派。3場A土佐勤皇党の場、艶やかに竜馬に色仕掛けで迫るところ溶暗前にちょんと早霧のおでこを人差し指でつつくさまなど可愛いほどの色気である。

9場A長崎・グラバー邸の西洋の女=歌手(本役・美風舞良)の葉室ちあ理の唄いぶりが艶あって福々しく豊饒である。

さて、本公演を凌ぐ笑いの場面は、まず華凛もゆるの女中=老婆(本役・花露すみか)。3場A土佐勤皇党で、敷いた布団に自ら包まってしまうとこなど腹を抱える。暗転寸前に見せるオテモヤン風メークのおかしさ。顔技である。8場B恋のライバルでも旅籠の老婆(本役・花露すみか)で、間を外す。思いきりの崩し方で、コメディー路線を特色にするのも選択であろう。

本公演も含めて、マンガ展開のコメディーということもあり、時代劇に於ける所作、考証などとはいわないが、お芝居の作法として謹まねばならぬ箇所がある。本公演でもそうだが、幕開き後、芝居へ入る直前にお竜と佐那子が竜馬の霊を弔うためピストルを撃つ礼砲シーンは、いくら空砲である前提でも空(上)に向けて撃つべきだろう。客席にピストルの先が向いている。ここだけは、笑ってはいられないところだ。

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宙組新人公演 幕末青春グラフィティー『維新回天・竜馬伝!−硬派・坂本竜馬III−』(作・演出 石田昌也/新人公演担当 鈴木圭)=2007年1月16日、東京宝塚劇場。 ?????????????????????


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