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石井啓夫の“新人公演”を観た! 星組「シークレット・ハンター」
本役から盗んで盗みまくれ!
    by 石井啓夫 演劇コラムニスト
ポイント的崩し場面があったら
内容的にも構成的にも展開的にも、他愛なく平凡な作品ではしばしば、本公演より新人公演の方が当を得て面白く観劇できることがある。

演技上の難易度に関係なく、真剣な芝居ぶりが単純さに味を付けるためだ。

まったく逆に平凡が故に本役のスター性や芝居心でもたせていた舞台が、未熟故に本来の単純性を露出させてしまう場合も当然、起こる。

今回は、内面性が希薄なわりには終始、喜劇タッチで展開される芝居だから、演じる側ににじむソフトさ、コミカル要素の表出が要求される。新人たちには難しい。

それだけに、今回の新人公演は演じる側、演出する側にもう少しポイント的崩し場面を作り出してもよかったのではないかと思う。

あまりにまっとうに本公演をなぞったから、味も素っ気もない舞台になってしまった。

ポイント的崩しとは、新人公演ではかなりな範囲許容される喜劇シーンを突出させた過大演出のことである。

今回では、Secret3の“船上パーティー”シーンの船長(汐月しゅう=本役・祐穂さとる)のところなど、もっと弾ませても面白かったのでは。

れぞれに輝きの片鱗
汐月はしかし、かなり大胆におトボケの味を出してよかったが。初舞台(2004年4月、『スサノオ』)の初日のロケットを見て以来、わたしはこの長身のユニークな個性を感じさせるスターに密かに注目しているのだ。

それに次景“レストラン”で、ジュニファー(羽桜しずく=本役・遠野あすか)にフライングフィッシュ・ケーキを身振り手振りで説明するマスター(本役・銀河亜未)ももっと大胆に笑わせてよかった。その方が客席は安堵する。

もっとも新公で演じた茉莉邑薫(笑顔が美しい)は、それなりに頑張っていた。

出だしから、それこそかなり素っ気ない感想ばかりになってしまったが、新公メンバーはもちろん、現在の立場、持ち分を発揮してそれぞれに輝きの片鱗を覗かせてくれた。

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