■新公らしい主演コンビ
作品にあまり関心が及ばないぶん、スター要素の観点に発見があった。
初主演コンビの麻尋しゅんと羽桜は、新公らしいコンビ。
麻尋はすでに本公演でも主要役を経験している期待の新進男役で、歌唱の柔らかい味わいは一路真輝をふと思わせる情感に富む。
ところが、スター性十分で常に目立つ位置にいるにかからわらず、“男役”の自覚に乏しいのではと感じさせる雰囲気がいつもつきまとう。
不思議なスターといってしまえばそれまでだが、この世界では対娘役に比較しての男らしさを見せるところに魅力が発揮されるのだから、歌も芝居も踊りもそれなりにみなこなすからといっても、舞台上では“男”になりきってくれなくては困る。
女性のまんまで肩をいからせ前のめりな姿勢ばかりで男役を表現しようとするから、いくら表情をきつくしたり声質を変えても、仕草雰囲気に女っぽさがのぞいてしまう。だから、セリフが怒鳴り声になってしまう。
歌唱だけでなく、期待を寄せているだけにいつもこのスターにはきつい要求ばかりになってしまうが、新公時期にぜひ、達者な男役像を形成して欲しい。
本役に安蘭けいという傑出したトップスターがいるのだから、安蘭のすべてを盗み盗み盗みまくってみてはどうか。
■常に努力を
この麻尋ダゴベールと絡む、ある王国の王女役を演じた羽桜は、すっきりした美人顔でまず、雰囲気はそのまま清純な王女、娘役の基本形を踏まえて文句ない作りだ。
セリフ声に特色を持つが歌唱ともども場数でこなれてくるだろう。
スタイルもよく、ブリジッド実は?の役(本役・琴まりえ)の妃咲せあらと共に今後の星組の娘役陣の中心を担ってゆく新進である。
セルジオ(本役・柚希礼音)の夢乃聖夏は、見映えも雰囲気もなかなか。明るく際立つ顔立ちで歯切れもよく期待感十分な男役だ。
同じく、男爵(本役・立樹遥)を演じた鶴美舞夕も、そう。厳しさと愛嬌を併せ持つ楽しみな男役。
昔から、組カラーはトップスターに染まるといわれる。そこからすると、星組は歌唱に秀でたコンビを頂いているだけに歌の旨さを特色とし、さらに2番手に柚希という傑出したダンサーもいることで、ダンスの手本にもこと欠かない。芝居はもとより達者な組。
三拍子揃った星組として、前途洋々、しかし常に努力を忘れないで次へ進んで欲しい。
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星組新人公演 ミュージカル『シークレット・ハンター−この世で、俺に盗めぬものはない−』(作・演出 児玉明子/新人公演担当 稲葉太地)=2007年5月29日、東京宝塚劇場。