宝塚のパラドックスに
昭和52年入団。唐十郎にかぶれる一方、ミュージカルが好きだった。
「宝塚は当時、月給制で、ミュージカルを作るには日本で一番いい環境だった。一種のワンダーランド。先輩の演出家は親より年上だったが、今ではそれが得がたい経験だったと思う」
花組で上演中の「エリザベート」は自身が見つけ出して育てた大ヒット作だ。死の象徴が主役という異色作。
「宝塚の男役は、ある女の子が、ある芸名の男役になり、さらに役を演じる。2段階の変容がある。それが、死という抽象的な役を演じるときに生きてくる。宝塚のパラドックスにうまくはまった作品なんです」
|
「死」の次は吸血鬼
花組は、トップお披露目となる春野寿美礼のトートと、これで退団する大鳥れいのエリザベートの組み合わせだ。
「今までのエリザベートは、はかないタイプだったが、大鳥は地に足のついた女優に成長し、リアリティーがある。トートは逆に地から浮いたカゲロウのような存在。その対比で物語の寓意(ぐうい)性が明確に出た」と説明する。
今年末には月組でバンパイアを題材にした新作「薔薇の封印」を上演する。
「ノーブルで魅力的な吸血鬼にしたいね。興味があるのはやはり歴史もの。その中に21世紀の視点をどう持ち込み、描くかが課題です」
|