自然とわき上がった感情
−−なるほど。では、役作りのほうは?
フランツはじっと立っているだけで、存在感と皇帝らしさを出さなくてはいけない。最初は、ひとりの人間としてエリザベートとどう接するかなど、人間味を意識していました。
−−なるほど、なるほど。
でも、東京公演に向けて、人間味はにじみ出る感じで、より抑えた演技になるようと稽古(けいこ)しました。感情の踏み込み方を間違えると、急に存在感が消えてしまう役なんです。
−−そうやってお話を聞くと、難しい役なんだなあと改めて感じますね。
役の年齢が上がるにつれ、自然と自分の歩き方が変わっていたのも不思議でした。それから、公演を重ねるうちに、息子のルドルフへの感情が自然と沸き上がってきたんです。
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外部出演は武者修行
−−具体的にはどのような感情ですか?
いつも舞台袖からルドルフを見ているのですが、光り輝いているはずの息子がすごく小さく見えるんです。「自分の息子はこんなはずではない」という悲しさ、情けなさが込み上げてきて、自分でも驚きました。
−−観劇の際、そのあたりを意識しているといっそう深みが感じられそうですね。さて、冒頭おっしゃったように外部出演が続いて戻ってこられた宝塚の舞台ですが、いかがですか?
宝塚に戻ったとき、客席の皆さんから親戚(しんせき)のような温かみを感じました。誰も私を知らない外部出演は、いい武者修行だったんだなあと実感しました。これからも男も女も、いろいろな役に挑戦していきたいです。
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