知親は、はっきりと朱天童子の正体を確認することはできなかった。だが、顔につけた傷は、こんどこそ動かぬ証拠になる。「でかしたぞ」。兼家は、ほくそえむ。近々宴が催される。保輔はいやでも出席しなくてはならない。そのとき左頬に傷があれば…。一方、保輔は傷を癒していた。頬の傷以上に、心に大きな亀裂を生じさていることは、保輔本人にしか分からない。手下の鬼童丸(立樹遙)は、宴への対応に頭を悩ませるが、保輔は「秘策がある」という。太宰府にあって周囲に知られていない弟の保昌(朝海ひかるの2役)を自分だとして出席させるというのだ。