−−第1幕−−
夏の章


お与津御寮人(白羽ゆり)は、近衛家の屋敷に密かに身をかくしていた。夏6月。きょうは、お与津が愛する後陽成天皇第三子、政仁親王と二代将軍徳川秀忠の七女、和子(まさこ)との婚儀の日だった。天下を治めた徳川家の権勢力は、朝廷にも及んでいた。政仁親王と和子を結婚させ、親王を天皇に即位させようというのだ。政仁親王との間にふたりの子をなしていたお与津なのに、身を引くことを余儀なくされていた。
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