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「目黒の秋刀魚」と「つづれおり」
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秋の味覚サンマの水揚げ、なんてニュースに、目黒で初めて焼きたてのサンマを食べた殿様は、さぞ喜んでいるでしょう。お城に帰ってからもその味が忘れられず、寝ても覚めてもサンマのことばかり…という噺「目黒の秋刀魚」の出番が多くなるころ。
なにしろこの殿様、毎日食べているお米は俵の中でできると思っているほど無邪気。朝の御前を召し上がりながら、家老の三太夫を呼び、「これ、きのう食した菜の煮物は美味であったが、今朝の菜は、なぜまずいか?」「恐れながら…きのうの菜は下肥(しもごえ)をかけてできましたもの。そのため美味でございます」「そーか。下肥をかけるとうまくなるか? しからば、これにかけてまいれ」。
お城で出てくるサンマは、蒸して脂を抜き、パサパサにしたものだったから、まずかったはず。この噺、「サンマは目黒に限る」と落ちるが、だれでも知っていて有名すぎるので、私は「殿、私は疲れました。家老(過労)でございます」とやっています。
殿様つまりキング。キングといえば、キャロル・キング。作曲家にしてピアノの弾き語り歌手と多芸多才な彼女の代表作はアルバム「つづれおり」。この中に収められている、大ヒットした「イッツ・トゥー・レイト」は何度聴いたことか。カーリー・サイモンの旦那さん、ジェームス・テイラーが参加しているのもうれしい。聴くうちに「あれ、昔の名曲にこんなのがあった」と錯覚を覚えてしまうほどの…つまり名作の古典落語にも似たものがあり、いやされるのである。これから秋がきても、このアルバムは飽きがこない。
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落語を題材にしたテレビドラマ「タイガー&ドラゴン」の影響で寄席に若い人たちが行くようになったり、あるいは子供たちの間で「寿限無」をそらんじることが人気になったりと、落語が静かなブームになっているとか。そんな中、ENAKでは春風亭栄枝師匠の音楽コラムを始めます。栄枝師匠はとなにしろ三度の飯より四度の落語より洋楽が好きといういささか困った真打ちなのではありますが、さすがの軽妙な筆で、落語と洋楽について書いていきます。毎月半ばごろ掲載予定です。
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information |
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(1)「牡丹灯籠」とKiss
(2)「寿限無」とC.C.R
(3)お盆だしカントリーロード
(4)「目黒の秋刀魚」と「つづれおり」
◆profile
しゅんぷうてい・えいし
落語家
東京都豊島区出身。
昭和32年3月 京華高等学校卒業
昭和32年10月 8代目春風亭柳枝に入門
昭和34年12月 同師匠没後8代目林家正蔵に移門「林家枝二」
昭和35年8月 二つ目昇進
昭和48年3月 真打ち昇進
昭和57年1月 師匠彦六(正蔵改め)死去
昭和58年7月 7代目春風亭栄枝を襲名
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