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漫画家、倉田真由美さんに聞く
(3)生きるため 妥協点は必要
10月28日(土)  東京朝刊 by 竹中文
《漫画家としてデビューした直後は売れなかった》

−−生活は厳しかった。
倉田 ええ。(大賞をもらった年に)確定申告をしたときの収入が185万円だったの。かなり厳しいですよね。そのうちの80万円は賞金だからね。漫画の仕事は少しだけ入りましたけど、半分以上は塾の先生とか、マージャン店のアルバイトによる収入ですね。

漫画家・倉田真由美さん=東京都千代田区大手町・東京産経本社(撮影・瀧誠四郎)

−−そんな生活が長かった?
倉田 年収が200万にまでいかない年が3年ぐらい続いた。お金がないことがしんどかったですよ。いくらきりつめても、単純に生活できない。例えば欲しいものが買えない。服が買えない。食べられない。基本的な欲求がなかなか満たされないという苦しさがありましたね。本当に貧乏でしたから。

−−どんな食事を?
倉田 連日、納豆とご飯とかね。でも貧乏を経験したのも今の私にプラスになっていると思う。

−−どうして?
倉田 また貧乏になっても大丈夫だと思えるから。自由業の人って「売れなくなったらどうしよう」という不安感に駆られることがあるんですよ。私も、そんな気持ちになることがないわけではない。でも本当に貧乏になっても生活はできる。爪に火をともすようにして暮らした経験があるから、わずかのお金でつましく暮らすことができる。

−−恐怖心が克服できる。
倉田 そうですね。その土台は強い。焦らなくてすみます。嫌な仕事をしなくてすむし、売れなくなってもいいやと思っている。その点で本当に楽だなあ。

−−逆に、売れてからつらいことがある?
倉田 あります。今の私の場合は時間がないのがつらい。そうなると、どうしても睡眠時間や余暇の時間を削るしかない。東京で仕事をするのは週に3、4日ですが、その間はスケジュールがぎっしりと詰まっているので、5時間も寝られません。余暇の時間を削り、遊ばなくなると漫画に描くネタがなくなってしまいます。だから自分が生きやすく生きるための妥協点を見いだしていかなければいけない。その妥協点を見つけるのが下手な人が多くなっている。

−−なぜ増えているのだと思いますか。
倉田 そもそもマスコミが「夢を追おう」などと言い過ぎだよね。私は「夢」という言葉に拒否反応がでる。取材している駄目な男たちの中にも過大な「夢」を持っている人が多いから。一生、夢を追えばいいのかもしれないけど、たいてい周りの人間が巻き込まれる。妻とか恋人とか親とか。それが子供だと悲惨だよね。

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【プロフィル】倉田真由美
くらた・まゆみ 昭和46年7月福岡市生まれ。平成7年に一橋大学卒業後、「ヤングマガジン」でギャグ大賞を受賞し、漫画家の道に進む。平成12年から、週刊誌「SPA!」(扶桑社)で、漫画「だめんず・うぉ〜か〜」を連載している。著書は「くらたまのお蔵だし」(同)、共著に「ダメだ!この会社」(小学館)など多数。新聞やテレビ、雑誌のコメンテーターとしても活躍中。