夏休みに向けてハリウッド映画の興行収入が好調だ。同時期で比べるとここ10年で最高になりそうな勢い。ヒット作の続編が勢ぞろいしたのが主因で、配給会社からは「ハリウッドの娯楽大作が再評価されている」と喜びの声があがる。昨年、21年ぶりに洋画の興収を抜き去った邦画は苦戦しているが…。
シリーズ3作目の「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」、4作目の「
ダイ・ハード4・0」、5作目の「
ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」…。今夏は、近年まれにみるハリウッドの超人気作の続編の当たり年となった。
公開前は「新味がない」「オリジナリティーの欠如」といった厳しい声も少なくなかったが、ふたを開けてみれば、どの作品も予想以上の人気を集めている。
先行した「パイレーツ−」がすでに100億円を突破したほか、やはり続編の「オーシャンズ13」、さらにSFX大作「トランスフォーマー」など話題作も控えており、5月末から8月にかけて公開のハリウッド映画の興収見込みは約480億円。ここ10年の夏シーズンで最高だった平成16年(約390億円)を大きく上回る見通しだ。
昨夏はアニメ「ゲド戦記」や「日本沈没」が大ヒットし、年間でみると21年ぶりに邦画の興収が洋画の興収を抜き去ったが、今夏は「舞妓Haaaan!!!」「大日本人」「西遊記」などがヒットしているものの、6〜8月公開作品の興収は200億円前後の見込みで、前年同期(約270億円)を下回りそうだ。
なぜこの夏、ハリウッド映画なのか? 「パイレーツ−」の配給元ブエナビスタインターナショナルジャパンでは「ブランド力が高く安心感を与える超人気作の続編がそろった」と指摘。さらに「泣かせる感動ものが目立った邦画ブームへの反動もあるのでは。ハリウッドの娯楽大作の豪華さを再認識したのではないでしょうか」と話す。
「ダイ・ハード4・0」の配給元、20世紀フォックスでは「邦画ブームで映画鑑賞がより身近な娯楽として定着し、映画館に足を運ぶ人が増えて、劇場の予告編で『ハリウッドの娯楽大作も楽しめる』と考える人が増えた」と分析する。
「パイレーツ−」の製作費は約3億ドル(約360億円)。上映時間は約169分だから、1分当たりの製作費が約2億1300万円の計算だ。観客が豪華さや派手さを求めるなら、邦画はハリウッド映画には太刀打ちできない。
映画評論家の川本三郎さんは「たまたま今夏、派手な“お祭り映画”が集中しただけ。高いクオリティーの作品が増えてきた邦画に観客の支持が集まるという大きな潮流に変化はない」とみる。秋以降、邦画巻き返しはあるか。