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「釣りバカ日誌」20作品目 俳優、三國連太郎に聞く
「濁り洗い落とすよう」自分見直し
9月8日(土)   大阪夕刊 by 福本剛
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「最初は1本だけの約束だったのですが…」と笑う。いまや20作目を数え、国民的映画となっている「釣りバカ」の「スーさん」の話なのだから、驚いてしまう。「(原作の)スーさんは僕とあまり似てないから迷った。でも、『漫画から離れたい』といわれ、僕も社会喜劇風のものが気になっていたから、それならやろうと…」

三國連太郎長身でスマート。とても84歳には見えない、圧倒的なスケール感。だが、めがねの奥にのぞく瞳や、背をすぼめて腰掛けるしぐさからは、何ともいえぬ親しみやすさが漂う。そんなところが、多くの監督から愛され、スーさんにも生かされたのかもしれない。

昭和63年のシリーズ開始時はバブル期にかかり、従来の会社経営からの脱却という考え方が浸透し始めていた。そこに現れたのが、ハマちゃん(西田敏行)、スーさんのコンビ。「伝統的なものを、ハマちゃんがどんどん壊し、それをスーさんが受け入れていくのが面白い。2、3作と続くうち、僕たちのテーマと社会が一緒に回り出し、それが20年間続いたと思う」

★ ★ ★

《鈴木建設の会長に就任したスーさん。だが、あいさつ時に頭が真っ白になり、ヒラ社員のハマちゃんの機転に救われる。数日後、スーさんが今度は行方不明となり、ハマちゃんは手がかりから岡山へ。無事再会した2人は、そこで会った、自然保護運動を続ける地元住民から、地域のリゾート計画を聞かされ唖然(あぜん)。開発業者が鈴木建設だったのだ…》

映画「釣りバカ日誌18」でも名コンビぶりをみせたスーさん(三國連太郎、左)とハマちゃん(西田敏行)
映画「釣りバカ日誌18」でも名コンビぶりをみせたスーさん(三國連太郎、左)とハマちゃん(西田敏行)


バブル崩壊、再就職、後継者不足…。社会情勢や世相も織り込み、日本の“今”を笑いと涙に包んできた同シリーズ。新作「釣りバカ日誌18 ハマちゃんスーさん瀬戸の約束」(朝原雄三監督)では、自然環境がテーマになったほか、スーさんにも大きな転期が待っていた。

「会長になり、認知症のような芝居も必要になった。そんな状態で岡山に行くが、どう演じようかと…」。スーさんは劇中、岡山で大仕事をする。そこに登場するのが、政財界の実力者、渋谷(小沢昭一)である。

「役者は、物語を実体化するため芝居の足がかりを求めることがある。僕は、この大切な場面で、小沢君の配役を頼んだ。彼とは、昔から気の知れた仲であり、彼をきっかけに、濁ったものを洗い落とすように演じた」?2人のシーンはわずか数秒。だが、迫力と緊張感は圧倒的だ。演技への執念がみなぎった、俳優、三國の真骨頂が見えた瞬間だった。

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