右肩あがり
ハウスシェアの物件探しや入居者探しを行うインターネットの掲示板も盛況だ。そのひとつ、「ルームシェアジャパン」(
http://roomshare.jp/)は開設以来、アクセス数、ユーザー数ともに右肩上がり。また平成16年10月からハウスシェアリング制度を始めたUR都市機構でも、契約件数は16年度73件、17年度180件、18年度218件と少しずつ増加している。紫苑も来年には都内に4軒目をオープンさせる予定で、一つの生活スタイルとして定着しつつあるようだ。
都心でルームシェアが増加しているのは、非正社員の増加や企業の福利厚生の低下など、いわゆるワーキングプアの問題と無関係ではないという指摘もある。
紫苑に住む女性会社員(27)は、7年前に就職。初の1人暮らしで住んだワンルームマンションが月10万円。手取り約20万円の給料から、ほとんど寝るだけのための家に10万円を支払うのは「生産的でない」と感じた。
また、友人と2人で東京都豊島区の2DKのマンションに住む土田晃之さん(27)も「1人で住むと部屋代だけで7万〜8万円。だけど今は、光熱費と食費込みで1人6万円。安い家賃で広い部屋に住め、やっと貯金もできるようになった。ルームシェアは、今後生活レベルをあげるための一手段」と話す。
向き不向き
シェアハウスの入居者たちは、寂しくない▽病気になったとき安心▽刺激を受ける▽安い−などのメリットをあげる。一方、「生活の時間帯が合わず、家に帰ってもリラックスできない」などデメリットも多く、早々にシェアを解消する例も。
紫苑で暮らす人たちによると、シェアに向かない人は(1)思いやりがない(2)精神的に人に依存してしまう(3)他人の行動を気にしすぎる(4)意見がぶつかったときに譲れない−などだ。
「ルームシェアジャパン」の運営者、秋祐樹さんは、「狭い建物で同居するには互いに率直な意見表明が必要だが、相手の気持ちを忖度(そんたく)する日本人的感覚と乖離(かいり)している」ことを失敗の最大原因にあげる。
秋さんは「10年前に比べると、ルームシェア、ハウスシェアという単語自体が何のことを意味するかが理解されるようになってきたこともあり、方向性としては普及方向にあることは間違いない。住居を定めにくい非正規雇用者が増加しつづけるとすれば、今後もシェアは増えていくと思う」としている。