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歌舞伎役者、中村橋之助に聞く
等身大の感覚“武器”に
  東京朝刊 by 生田誠
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ちょうど1年前、新橋演舞場では、橋之助主演の舞台「魔界転生」が上演されていた。柳生十兵衛に扮した橋之助は、死の世界からよみがった父・柳生但馬守ら剣豪たちとの死闘を繰り広げる。剣の腕もさることながら、彼の武器となったのは演じ手そのままの人間味だった。

中村橋之助「本当にお客さまがよく入ってくださった。中日過ぎでしょうか、来年の9月も演舞場で(新しいものを)やってくれませんかと言われ、次も十兵衛シリーズでやろうかと思っていたんですが…」。橋之助はその後、ドラマの撮影のために東映京都撮影所に向かい、そこで、今回の主演作、「憑神(つきがみ)」の映画版の製作が行われていることを知る。

映画では、妻夫木聡が浅田次郎原作「「憑神」の主人公を演じた。貧乏旗本の二男で婿養子先から離縁されて実家に戻った別所彦四郎。時代は幕末の動乱期、江戸の下町、小名木川の土手の古びた祠(ほこら)に彦四郎が手を合わせたことから、事件はスタートする。あろうことか、拝んだのは「三囲(みめぐり)」ならぬ「三巡」の祠(ほこら)で、貧乏神、疫病神、死神の3人が彼に取り憑き、災いをもたらすことになった。

「彦四郎は舞台の上で驚く男。演ずるというより、ぼくに重なり合う部分がある。等身大の自分が舞台に出て、G2さんの演出によって新しい自分が表れればいい」。新しい自分を発見する作品に主演することになったのは、「魔界転生」でコンビを組んだ脚本・演出のG2の提案による。「展開がスペクタクルでドラマ性が高く、人情味にあふれていた。浅田先生ならではの作品だと思った」。

歌舞伎俳優である彼が、歌舞伎以外の作品を選ぶときには、「世間(の関心)からずれていないこと」が条件になるという。人々が今、何を喜び、怒り、悩んでいるか。この作品でいえば、幕末と現在との政治状況の類似点。7月、ニューヨーク公演から橋之助が帰国した翌日、参議院議員選挙で自民党が大敗をした。「安倍首相の思いが(徳川)慶喜さんに重なった。彦四郎たちが選挙で戦った人たちに思えてきた」と話す。

2度目となる相方のG2を「おもしろい人で、がんこ親父のところもある」と評する。「去年は、G2さんが時代劇も、演舞場も始めてでぼくにお聞きになることも多かった。今回はそれは一切なく、自由に動ける安心感がある」。等身大の自分で舞台に出て、「今までの自分の五感とは違った五感」を教わっているという。2つの作品を比較して「去年よりもはるかにおもしろいし、あっという間に終わってしまう」。新境地を開く舞台へ自信たっぷりだ。

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