久保さんは「自分の『話し方』が気になっても、どこから手を付けたらいいのか分からないという人は多い。ゲームを使って楽しみながら身につけてほしい」と話す。
話す技術を指南する本も根強い人気だ。
●(=木へんに世、えい)出版社が今年6月に発売した『好感をもたれる話し方のマナー』は、同時に刊行した「贈り物」「食事」といった他のマナー本の倍近く売れている。「話し方のマナーは必要なのに、習得する環境は整っていないということ」(編集部)。イラストをふんだんに盛り込み、20〜30代の女性に好評だ。
コミュニケーションの心構えから説き起こす、東山紘久・京都大副学長(臨床心理学)の『プロカウンセラーのコミュニケーション術』(創元社)も、一昨年の発売以来11刷約5万部を発行した。カウンセリングを勉強する学生だけでなく、会社員や学校の教員にも読者が多いという。担当編集者の渡辺明美さんは「コミュニケーション力はいつの時代も変わらぬテーマだが、IT化で向き合って会話する機会が減っていることが、需要に拍車をかけているかもしれない」と指摘する。
「コミュニケーション下手」との評がついて回る日本人。苦手意識を払拭(ふっしょく)する手はないのだろうか。
企業や自治体向けのコミュニケーション能力開発研修などを手がける 「話し方研究所」(東京)は、「話し上手は聞き上手」だとして、今年から一般向けの「聞き方講座」を設けている。
同研究所の福田健会長(71)は「お互いの価値観や立場の違いを理解することが、自分の意思を伝える基礎になる。積極的に反応を返さなかったり、相手が話している間に次の質問を考えたりと、聞き方が原因で話がかみ合わなくなるケースも少なくない」と語る。同研究所が作成したチェックリストで、会話を停滞させるようなことをしていないか自己診断してみてほしい。
福田さんは「考え込んだり、驚いたり、一緒に笑ったり。聞く人の反応によって話の内容も大きく変わる。『聞くことは活動』という意識を持ってほしい」と話している。
会話が停滞する条件
(1)「こうすべきだ」と自分の意見を押しつける
(2)話がタテマエや一般論になる傾向がある
(3)乗ってくると、夢中になってしゃべる
(4)自分と意見の違う相手は敬遠する
(5)「そんなの難しい」と相手の話を否定しやすい
(6)腕組みしたり、目をつむって聞くことがある
(7)相手がしゃべらないと、自分も黙る
(8)表面的な話が多く、突っ込んだやり取りをしない
(9)誰かが言い出さないと、自分から発言しない
(10)必要に迫られないと、自分から人に話しかけない
※5つ以上該当した人は、停滞型。(話し方研究所作成)