今や生活に不可欠なツールとなった携帯電話。新規加入者の獲得に汗水を流してきた携帯キャリア各社だが、市場が飽和状態に達した今年は既存の利用者を“囲い込む”作戦にかじを切る。
長期利用者にポイントの優遇策を打ち出したNTTドコモとau(KDDI)。ソフトバンクは独特の料金プランで、新規獲得と既存ユーザーの優遇策を同時に行う。
さまざまなサービスの組み合わせを模索しながら、今後も長期利用者への優遇策を打ち出す意向に各社のブレはない。
アフターケアを含めたさまざまなサービスが、競争の舞台に変わる中、キャリアを変えずに新しいサービスをどんどん引き出す。そんな使い方が主流となる時代だ。
国民総所持…漂う飽和感
「国民総携帯」の時代であることは、電気通信事業者協会調べの国内携帯電話契約数が裏付ける。昨年11月末時点で9997万200件と、大台は目前。PHSも含めれば1億台はすでに突破。すなわち市場には飽和感が漂っている。
携帯電話は、昭和54年に電電公社(当時)の自動車電話が商用サービスを開始。当初はごく一部の人のための物だった。
平成4年にNTTからドコモが分社、6年からはレンタル方式に加え、携帯端末の販売がスタート。当初はビジネスツールとしての性格が強かったが、メールサービスの登場などで、ケータイの利用シーンが大きく拡大し、それとともに利用者を増やしてきた。
8年4月に、携帯電話契約数が1000万件を突破。以後、年間1000万件ペースで増え、12年3月に5000万件と、利用者は飛躍的に増加した。
その後も伸びはやや鈍化したものの、順調に拡大を続け、今や日本人の8割近くが携帯電話を持つ時代となった。
さすがに頭打ちが近づき、各社は新規獲得よりも、既存の利用者の囲い込みに注力せざるを得なくなってきた。
利用3%、予想外に硬直
市場に飽和感が漂う中、平成18年10月に導入されたのが、番号ポータビリティー制度(MNP)。それまでに使っていた携帯電話の番号を変えることなく、キャリアを変わることができる制度だ。
当初、ユーザー全体の約1割が制度を利用し、ドコモ、au、ソフトバンク間での移動が起こるとみられていた。だが、制度開始から1年を経過した段階で、制度を利用したユーザーは、全体の約3%にとどまった。メールアドレスの持ち運びができない、手続きが面倒−といった理由もあったが、各社が利用者の“囲い込み”を始めたこととも関係が深い。
ソフトバンクが18年10月に、「予想外割」として、2年拘束のプランを発表したのを皮切りに、auとドコモも昨夏、加入直後から基本使用料が半額になるプランを発表。どちらも2年契約が条件で、結果的にMNPを硬直化させた。
ただ、これらの料金プランは、長年にわたって同じキャリアを利用している層の不満も生み出した。そこで各社は長期利用者向けの対策を練らざるを得なくなった。