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||白井貴子インタビュー[2]

焦燥が頂点に達した87年。録音のために訪れた英国で野に咲くマーガレットを目にする。大地に根を張り、美しい花を咲かせる姿とボロボロの自分とのあまりの違いが、ひとつの決断をさせた。

白井貴子 「いかに自分を大事にしてこなかったかに気づきました。走り過ぎたのです。私は一生音楽を続けたい。そのためには、枯渇した心身に豊かさを取り戻さなくてはならない。いってみれば、お肌がピカピカになるまでお休みをとろうと思ったのです」

翌88年、充電に入ると宣言。苛烈な競争の世界から離れた。ヒットチャートという競技場から名前は消えていく。が、自分が空っぽになっていくことのほうがずっと怖かった。

スローライフロック
一歩引いたところからながめた、大量生産と消費を繰り返して傷ついた自分の姿は、いまの地球に重なって見えた。

「自分という地球を自らだめにしていた。そう気づいてから、地球そのものについて考えるようになった」

湘南に暮らし始めた。海岸の清掃活動に参加したり、エコバッグやリサイクル陶器を作るようになった。自宅を建てるつもりで土地を見てまわるうちにみつけた伊豆の森でキャンプ生活を楽しむようになった。自然の中での蘇生。

「つらい経験がよい作品を生むという人もいるけれど、どん底にいるときには何も生み出せない。一歩引いたり、時間をおいたりして“発酵”したときにはじめて何かが出てくる。発酵の時間が曲を作る人間には必要ですが、音楽ビジネスの中にいたらその時間を待ってもらえない」

白井貴子 地球をいやすことは自分をいやすことになった。観念だけで環境の旗を降っているわけではない。自然の中に身を置いて、見たり、聞いたり、感じたりしたことを歌にしている。だから、お説教くさくなったりしない。

地元神奈川県の環境大使に選ばれ、環境省の「3R(減らす、再利用、再資源化)推進マスター」にもなった。

「80年代は、小屋の中のニワトリでした。1週間でいくつ卵を産めるかが求められた。90年代からは庭先を自由に歩き、産んだだけの卵を拾い集めればよくなった。スローライフというかオーガニックな曲の作り方に帰られたからこそ、私はその後の20年も生きてこられた」

スローな生き方を実践していればこそ、その歌に込められた思いには真実みがこもる。

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1 雨上がり
2 Time Limit
3 Believing
4 Run 風のように 雲のように
5 Orion
6 Start Again
7 I Follow The Sunshine 太陽を追いかけて
8 It's My Rock
9 LOVE + HOPE 心のままに
10 最初で最後のメッセージ
11 潮騒

白井貴子公式サイトはこちら

ニューアルバム発売記念ライブ NEXT GATE 2008
2月11日(月)
Shibuya DUO Music Exchange
午後5時開演
問い合わせ:HOT STUFF 03(5720)9999


PROFILE
神奈川県藤沢市出身。福岡、名古屋転校後、中学、高校を京都で過ごす。フェリス女学院短期大学音楽科卒業。

1981年、CBSソニーからデビュー。年間100本を超えるハードなライブパーフォーマンスから「ロックの女王」と呼ばれ、「CHANCE」のヒットをきっかけに女性ポップロックシンガーの先駆者的存在となる。

88年、充電のため音楽的母国であるイギリス・ロンドンへ。96年、鎌倉にオリジナルレーベル「ROD」設立。自宅リビングで録音されたアルバム「LIVING」「HANA」リリース。

2006年、念願の伊豆の森にエコロジックスタジオが完成。