雪組「エリザベート〜愛と死の輪舞〜」大劇場公演評
情感とロマンチックさたっぷりと
大阪夕刊 by 平松澄子
宝塚歌劇で6度目になる「
エリザベート〜愛と死の輪舞(ロンド)〜」は、観客動員数が150万人を超えた(5月24日)。今回はウィーン・オリジナル版の来日公演に続く雪組公演で、新トップ・コンビ、
水夏希と白羽ゆりの宝塚大劇場でのお披露目でもある。改めて、この海外ミュージカルが日本で大ヒットした大きな要因は、主役をトート(黄泉の帝王)に変えて大胆に潤色・演出(小池修一郎)した宝塚版にある、と確信できた。
19世紀末。ハプスブルク家が支配してきたオーストリア・ハンガリー二重帝国が崩壊してゆく姿を、自由を求めてさすらう美貌(びぼう)の皇妃エリザベート(白羽)と、死を擬人化したトート(水)の愛憎を交えて描いた、ファンタスティックな歴史ドラマ。セリフを歌で綴る音楽(シルヴェスター・リーヴァイ)の魅力も圧倒的だ。
歴代トップがそれぞれに工夫してきたビジュアルを、水はシルバーとグリーンをベースにして、クールで凄(すご)みのある力強いトート像に作り上げた。白羽のエリザベートは若いころの愛らしさと艶のある美しさが際立つ。皇帝フランツの彩吹真央は歌も受けの芝居もうまく、説明役を兼ねる暗殺犯ルキーニの音月桂は明るさを秘めた無頼漢で新境地をみせた。
皇太后ゾフィーは男役の未来優希が歌唱力を生かして大きさと迫力を出し、皇太子ルドルフの凰稀かなめは繊細な悩める貴公子役にぴったり。全体に歌唱力がアップしており、それぞれの役柄の理解も深くなって、再演を重ねるよさが出ている。
歌のバトルのような激しさがあるウィーン版とは違って、トートとエリザベートがスモークの中を抱き合って昇天する宝塚ならではのソフトなフィナーレ。情感とロマンチックさをたっぷり加えた仕上げ方が、日本人の琴線に触れるたまらない魅力になっているのだろう。
18日まで。東京宝塚劇場公演は7月6日〜8月12日。
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