宝塚歌劇宙組「黎明の風〜侍ジエントルマン 白洲次郎の挑戦〜」(作演出・石田昌也)「Passion 愛の旅」(作演出・酒井澄夫)東京公演が4日午後、東京・日比谷の東京宝塚劇場で始まった。5月18日まで。
専科の轟悠が特別出演。轟はこれで5組すべての公演に特別出演を果たしたことになる。けいこ中のけがで娘役トップ、陽月華は休演。

「黎明の風」は戦後日本の復興・独立に、舞台裏から尽力した快男児、白洲次郎(轟)と、日本を占領統治した連合国軍最高司令官マッカーサー(大和悠河)との真正面からの渡り合いを描く。
戦争責任、昭和天皇の処遇、憲法改正など、重く堅い議論のセリフが飛び交い、タカラヅカとはおよそ似つかわしくないのに、白洲やマッカーサーをはじめ登場人物たちはみんな、リンとしてカッコいい。互いに自分の国を想い、信念を貫くすがすがしさだろうか。
東京ローズ、特攻隊、食糧難、原爆、東京裁判、朝鮮戦争…戦後63年が過ぎてもいまなお引きずる微妙な政治問題まで、よくも多くの史実を入れ込んでまとめあげたものだと感心。時代を浮き彫りにする「銀座カンカン娘」「東京ブギウギ」など歌謡曲の使い方も効果的で、命を落とす若者たちへのレクイエムとして轟が歌う「群青」は涙を誘う。
この舞台には出てこないが、白洲氏と同歌劇団創立者の小林一三翁は面識があり、一緒に米軍に接収された東西の劇場の返還交渉もしたそうだ。宝塚で扱う題材としては賛否もあるだろうが、「平和こそ…真実の愛」というメッセージは確実に伝わる“男前”な昭和秘史になっている。
「Passion 愛の旅」は、夢や愛を求めて世界を回る正統派のレビュー。フィナーレで轟と大和の“2トップ”が踊るデュエットダンスは見逃せない。
この日は、午前中の通しけいこの後、劇場内で轟と大和が記者会見した。轟は硬派の作品だからこその手ごたえを次のように話した。
「戦前・戦中・戦後を扱った難しい主題の作品ですが、1時間半にきっちりと収められ、宝塚大劇場では大勢の男性のお客さまに涙を流していただきました」
一方大和は、轟との初共演を大いに楽しんでいる。
「轟さんはどんな芝居でも受け止めてくれるので、真正面からぶつかっていっています」