花組トップスター　真飛聖に聞く

活気呼ぶ新しい風に

2008/4/26 　産経新聞大阪夕刊 by 平松澄子

花組に大輪の“ボタンバラ”が咲いた。トップに就任すると、さまざまなグッズなどを新たに作るが、その象徴となるデザイン。

「存在しない架空の花なんですけど、好きなボタンとバラを一緒にしたんです」

新トップは何かと新しい工夫が好きなようである。

昨年１２月２５日付で、春野寿美礼のあとを受けてトップに就任。今年２月の名古屋・中日劇場公演「メランコリック・ジゴロ」「ラブ・シンフォニーＩＩ」でトップ・デビューし、５月９日初日の宝塚大劇場「愛と死のアラビア」「ＲｅｄＨｏｔＳｅａ」がトップお披露目公演となる。

「春野さんはあこがれの方で、５年間も主演男役をつとめられて、すべてにおいて完璧（かんぺき）に見えました。そんな方のあとですから、言葉では表せない重みがありますが、不安をぬきにしてありがたいし、幸せに感じます」とスキッとした表情で現在の心境を述べた。

中日劇場公演でトップの実感があったのは、フィナーレの最後でみんなに迎えてもらう瞬間だったという。

「一番明るいスポットライトを浴びて、全員の目が一気にこっちを見ている。組子全員の瞳をもらうのは主演しかないし、“組子の愛”に支えられて私はここに存在しているんだなぁと、すごく思えましたね」

「愛と死のアラビア」では１９世紀初めのエジプトを舞台に、敗戦で捕虜になったあと、イスラム教に改宗し、アラビア人の妻をめとり、アラブ戦士として生涯を終えたイギリス兵トマス・キースを演じる。

「原作もある実話なんです。国や名前がややこしいし、宗教の深い部分は難しいんですが、国や人種、宗教などを超越した友情や愛情は確かに存在して、人と人とのつながりを大切に思える作品になっています」

ポスターはターバンを巻いた顔のどアップである。

「めちゃ大きくてびっくりしましたが、これも新しい試み。花組はコスチュームものが久しぶりでもあるし、新生花組を感じてもらえると思います」

「Ｒｅｄ Ｈｏｔ Ｓｅａ」は海の多彩な魅力を神秘的に見せるショー。

「題名通り熱いです。私はずっと人間なんですけど、周りはお魚さんの動きをおもしろく表現して、いろんな海の物語で綴る。私は海がすごく好きで、ボーとしたくなったときは海を見に行くこともある。季節的にもぴったりの作品ですね」

相手役の娘役トップは引き続き桜乃彩音がつとめる。

「彩音とは初舞台のときから縁があって、組替えで一緒になったとき、根本的なピュアな部分は変わっていなくてうれしかった。彼女とのデュエット・ダンスも新しい試みで、２人でどう表現していこうかと相談しているんですよ」

２人で築いていく新生花組は「心が素直で元気であってほしい」と願っている。「まずは私と彩音がそういうふうに通い合うことで、みんなにも思いが伝染すると思うんです。新しい風が吹くといい意味で組が活気づく。今の花組だったら何がきても怖くないし、新しい形が生まれてくればいいなと思いますね」

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まとぶ・せい　神奈川県川崎市出身。平成７年「国境のない地図」で初舞台を踏み、星組に配属。新人公演の初主演は１１年「我が愛は山の彼方に」の朴秀民役。１５年は「雨に唄えば」（東京・日生劇場）のリナでユニークな女役に挑戦し、「シンデレラ」（大阪・梅田コマ劇場＝当時）の王子役で初めて外部出演も経験する。

１６年「花のいそぎ」の小野篁役でバウホール単独初主演。１７年８月花組に組替え。１８年大阪のシアター・ドラマシティ公演「ＭＩＮＤＴＲＡＶＥＬＬＥＲ〜記憶の旅人」にマックス役で主演。昨年１２月２５日付で花組トップに就任した。今後は「ものすごいコメディーや、ひとりの人物の何十年もの生涯をやってみたい」そうだ。

「愛と死のアラビア−高潔なアラブの戦士となったイギリス人−」「ＲｅｄＨｏｔＳｅａ」の宝塚大劇場公演は５月９日〜６月１６日。東京宝塚劇場公演は７月１１日〜８月１７日。 　次は全国ツアー公演「外伝ベルサイユのばら・アラン編」「エンター・ザ・レビュー」（９月２０日〜１０月１７日）が決まっている。

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