花組トップの春野寿美礼の相手役をつとめて1年半余り。手とり足とり教え、導いてくれたその
春野が、今度の宝塚大劇場公演「アデュー・マルセイユ」「ラブ・シンフォニー」で、宝塚を退団する。

「“その日”が来るまで考えたくないんです。舞台に対する情熱や取り組み方など、教えてもらったことはすごーくいっぱいある。背中ばかり見ていたときより、ご一緒させていただくようになって、こんなに深いところまでいろんなことを考えていらっしゃるんだ、ということがわかりました。最初は付いていくだけで必死だったんですが、自分も舞台人として何を、どう表現したいのか、お客さまに何を伝えたいのかを、もっともっと強く出すべきだとわからされました。今回はとくに、そのことが課題だと思っています」
楚々(そそ)とした雰囲気をもつ正統派の美貌(びぼう)が、キリッと引き締まった。
 |
「アデュー・マルセイユ」イメージ・ポスターの春野寿美礼(左)と桜乃彩音 |
「アデュー・マルセイユ」は1930年代のマフィアが支配する仏のマルセイユを舞台にしたピカレスク・ロマン。桜乃は婦人参政権運動のリーダー、マリアンヌを演じる。
「男女平等が原則の今の時代の自分たちにはわからない、悔しさや苦労があったと思うんです。年齢的には等身大の女性ですが、当時のほうがずっと大人で芯が強い。そういう女性の心の葛藤(かつとう)を、どんどん深めていきたいです」
2部のレビューでは、春野を惑わすラブ・ゲームのシーンや、フィナーレのデュエット・ダンスなどを見てほしいという。「これまでの幸せがいっぱい詰まった想いを込めて、自分らしい色を出せたらいいなと思っています」
★ ★ ★
バレエを習っていた少女が宝塚へ入り、とんとん拍子で娘役スターの道を突っ走り、入団5年目の早さで頂点の娘役トップに就任した。
「自分の殻がちょっと破れたかな、と思えたのは『くらわんか』(平成17年バウホール)。お披露目公演『
ファントム』(18年大劇場)の歌姫クリスティーヌはまっしぐらで、毎日が夢のようでした。ツアー公演『うたかたの恋』のマリー・ヴェッツェラは一番やりたかったあこがれの役で、舞台に立つことが楽しかった。前回の『黒蜥蜴』(19年大劇場)の緑川夫人は苦しんで作り上げた役で、いい思い出です。『
あさきゆめみし』(大阪・梅田芸術劇場メインホール)の藤壺と紫の上は、日本物が大好きなのでうれしかった」と振り返った。
「次々に大きい役をいただいて、難しいですが勉強できて糧になっていると思います。どんなときでも素直であることが大切なので、忘れずに気をつけていきたいですね」
最後に、
次期花組トップに決まった真飛聖については、「まだ先のことなので…」と前置きして、「私が初舞台(星組)のときに、ラインダンスの指導をしていただいたんです。付きっきりでやさしく教えてくださって、元気をいただいた印象が強い。花組にいらしたときもほかの組の方という感じがしなかったです」と答えた。