宝塚歌劇月組「ME AND MY GIRL」(三木章雄脚色・演出)東京公演が23日午後、東京・日比谷の東京宝塚劇場で始まった。7月6日まで。娘役トップ、彩乃かなみの退団公演。組長の出雲綾もこの公演で退団する。

明るく、ハッピーなロンドン・ミュージカル。ロンドンでの初演は1937年。宝塚では13年ぶり3度目の上演になる人気の作品。
1930年代のロンドンを舞台に、下町ランベス育ちのウィリアム(通称・ビル=瀬奈じゅん)が、大富豪のヘアフォード伯爵家の跡継ぎとわかり、紆余(うよ)曲折の末に、めでたく迎えられるコメディー。当時の庶民と上流階級との生活習慣、言葉遣いなどの落差が作品のおもしろさで、社会風刺にもなっている。

宝塚では出演者がみんな若くて美しく、そうした階級の違いはわかりづらいが、二枚目の男役トップスターが、くだけたセリフやしぐさで演じるビルは、それまでにない男役像で新鮮だった。瀬奈も歴代の先輩たちに負けず劣らず、コメディー・センスを発揮して奮闘している。
「ビルは、誠実でまっすぐな人。華やかな舞台ですからメークはいつもより華やかなものにしてみました。初演、再演の方々のお芝居のよいところは伝統として受け継ぎながら、いまのメンバーたちとどういう役を作るかも考えました」と瀬奈は話す。
ビルの恋人サリーも教養のない下町娘という、宝塚の娘役には珍しい設定。この作品で退団する娘役トップの彩乃かなみが、かわいくハジけて好演し、同じく退団する組長の出雲綾が、ビルを指導するマリア公爵夫人役で熟練の存在感を見せている。
瀬奈によると、彩乃とは「ただ心の通い合った、よい芝居ができればいいね」と話し合ったという。
娘役の大役ジャクリーンは、男役ホープの明日海りおと娘役2番手の城咲あいのダブルキャスト。それぞれの持ち味の違いが楽しめる新しい試みだ。ただひとり、初演と同じ弁護士パーチェスターを演じる未沙のえる(専科)のひょうきんな演技は絶品の味わい。

宝塚歌劇は1967年の「オクラホマ!」を皮切りに、数多くの海外ミュージカルを、“宝塚色”に染め上げて上演しているが、楽しく盛り上がるなら、この作品が一番。一幕のラスト「ランベス・ウォーク」では、客席へ下りてきた出演者に合わせて、観客も体でリズムを刻み手拍子でこたえる。
初日午前は、通し稽古が行われた後、劇場内で瀬奈が会見した。