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こづき・わたる 埼玉県入間市出身。平成元年4月初舞台で、星組に配属。6年3月の「若き日の唄は忘れじ」を皮切りに新人公演の主役を4公演連続でつとめ、9年の東京特別公演「夜明けの天使たち」で初主演。10年1月、宙組発足に伴い組替え。翌年宝塚バウホール公演「TEMPEST」に主演。12年6月に新制度により専科へ移籍。大阪のシアター・ドラマシティ雪組公演「月夜の歌聲(ツキヨノウタゴエ)」主演、星組東京公演「ベルサイユのばら」アンドレ役、東京・日生劇場公演「風と共に去りぬ」アシュレ役と大役を演じたほか、「フォーチュン・クッキー」で初の外部出演も経験した。今年2月に星組に異動し、4月からトップとして全国ツアー公演を行った。 |
歌舞伎でいえば荒事の似合う堂々たる立役。久々に長身でダイナミックな大型のトップスターが誕生した。
お披露目公演は古代エジプトを舞台に描く1本立て大作「王家に捧ぐ歌−オペラ『アイーダ』より」。湖月が演じる若き将軍ラダメスは、エジプトの王女アムネリス(檀れい)に想われながら、エチオピアの王女アイーダ(安蘭けい)を愛し、戦争に勝利して敵国の解放と平和を訴える、という一途に突き進むマッチョな役だ。
「狼や獅子、鷲のようなイメージかな。小細工はいらない大きな役。戦闘シーンもラブシーンも銀橋を使った芝居が多いので、客席に近いところで見られますよ」と説明してくれた。
オペラをベースに、新たな脚本・演出(木村信司)と音楽(甲斐正人作・編曲)で作る宝塚バージョンで、全編が歌で進行する。
「歌だけで言葉や感情を伝えるのは難しいですね。歌詞はシンプルに削られているし、感情が高まっても音程は決まっている。メロディーはきれいだけれど、内容は結構深くて、音楽に流されないようにしなければいけない。実はお稽古の初日に、全員に全曲の譜面が渡されたんです。先生方の意欲がすごくて、星組のみんなの食いつきもすごい。負けてられないって感じになりますね。私が目指すのは、そんな姿勢でみんなで作っていく舞台なんです」
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「アイーダ」は専科時代の昨年10月、米ニューヨークのブロードウェーでディズニー・ミュージカルを見て大感激したという。
「まだトップになることも、宝塚で『アイーダ』をやることも知らなかった。単にお休みで見に行っただけ。ラダメスさんはかっこよかったし、アフリカ的なダンスシーンやアイーダさんの熱唱がダイレクトに伝わって、2度見ちゃいました」
トップ就任が決まったのは昨年12月。
「あー、ハイっていう感じで、星組でなれたことがうれしくて、やるしかないなーと。『アイーダ』はとんとん拍子に自分がやることになってびっくりしましたが、あのとき見ていてよかったと、不思議な縁を感じますね」 ● ● ●
小学校6年のときに宝塚を見て好きになり、バレエ教室などで猛特訓して、中学卒業時に受験。1回で合格した。
「男役がかっこよくて、舞台で踊りたいなーって思ったんです。寮生活のことも知らなかったけれど、入ればすぐになじんで楽しかったですね」
入団後は舞台栄えのする容姿が注目され、早くからニューヨークやロンドンなどの海外公演にも参加。宙組や専科を経るたびに、さまざまな経験を重ねた。
「宙組では新しい組を作っていくというめったにない経験ができて、それまでのお気楽な立場から、組のために全体を考えるようになりました。専科ではいろんな作品と新しい人たちとの出合いがあったし、外部出演で女の役も演じられた。宝塚をいっぱい楽しんじゃいましたね」
5年ぶりに戻ってきた星組。トップの実感はまだないそうだが、内面はスケールアップしたようだ。
「私、プレッシャーはあまり感じないんです。かえって自分にプレッシャーを与える方。今は寝ても醒めても舞台のことだけですが、もっと忙しくても大丈夫」というから、頼もしい。
宝塚大劇場の星組公演「王家に捧ぐ歌」は11日−8月18日。東京公演は9月19日−11月3日。
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