月組「シニョール ドン・ファン」
会見全文 東京公演制作発表
りかさん紫吹淳
「シニョール ドン・ファン」は、コシノ(ヒロコ)先生の衣装に助けられ、新たな宝塚を生み出していただけた。そんな作品です。

−−具体的な衣装の影響は?

コシノ先生は本当の男性なら身につけないような金のアクセサリーを出されました。「エッ? 」と思いましたが、それによって(主人公の)レオ・ヴィスコンティの役作りが変わった。たとえば、この金のアクセサリーをつけることによって、これをはずして投げ出すという、性格を表現するような動作へと結びついた。このアクセサリーひとつをとっても、先生のおかげで役がふくらんだことは事実です。

えみくら映美くらら
東京公演では、衣装だけではなく、髪型、アクセサリーなどについてもコシノ(ヒロコ)先生からアドバイスをいただき、もっともっとお勉強をしたいと思います。

−−具体的な衣装の影響は?

私自身の個性と役の個性とを引き出していただけたと考えています。ジルという役にスッと入っていけたのも、衣装の効果がすごく大きかったからだと思います。

植田景子植田景子(作・演出)
デザイン界と演劇界とのコラボレーションができて、非常に感謝しています。

−−具体的な衣装の影響は?

まずシルエットのみのイメージデザインをいただいたのですが、それがすでに想像もしなかったもので、よい意味で裏切られた、これまでの宝塚とは違う、大胆なものでした。ふだんの宝塚の現代ものの“枠”にとらわれない、21世紀のテーストを提示していただいた。作品の世界を広げてくれると感じました。

今回は新たにデザインしていただいたものだけではなく、コレクションで使用されたものもご提供いただいています。それらは写真を見ながら選んだのですが、その際、“色彩の計算”について学ばせていただきました。たとえばホテルのカジノにいく場面の衣装は黒にしよう。オープニングは黒白で次はパステルに。それならばセットの色彩はどうするか。計算というか方向性というか、そういう部分で大きく影響されました。

コシノヒロココシノヒロコ(衣装デザイン)
今回衣装を担当させていただくきっかけは、昨年10月、大阪のサンケイホールで開かれた「OSAKA FASHION ENERGY 2002−日本の美を愛でる−」(産経新聞主催)でした。あのとき7人のタカラジェンヌに着物を着ていただいたのですが、女性ではなく男役に着ていただくことで新しい着物ショーにすることができた。あのとき、うちのサロンでみなさんとワイワイとやっていたら紫吹さんが「次の演目はファッションデザイナーの話だから、先生が衣装デザインをやっていただけませんか」とおっしゃって、私も「あ!やろうじゃないの」ということになった。ふだんは東京にいますが、自宅は兵庫県芦屋市にあって、週末には必ず帰る。つまり宝塚のいちばん近くに住んでいるデザイナーなんです。

どうせやるのなら、ふだんの宝塚の衣装では見ることができない現代ファッションをもちこもう。そして会社(ヒロココシノインターナショナル)ぐるみで応援しよう。宝塚は関西生まれの劇団で、90年の歴史をもつ。関西経済界は常に宝塚を応援しているし、なによりも私自身、子供のころから宝塚にあこがれていたひとり。実際、楽屋におじゃましたら興奮しました。

余談ですが今回は音楽の指揮も女性、演出家も女性。そして、衣装の私も女性。女性ばかりが集まり、作り上げた、宝塚でも珍しいケースかもしれませんね。

衣装のありかたで演出も変わるような、そういう影響力のあるものを作りたかった。

衣装あわせのときには、「毎日毎日、着方は変わってかまわない。感性で着てください」と生徒たちに伝えました。いまのファッションはパターン化されていない。そのことをよく理解している生徒たちが着て、演じるのだから、存分に個性を発揮すればよい。

宝塚の長い伝統の中で培われたものを残しながらも新しい意識をもって作る。これがひとつ重要なポイントでした。宝塚ならではの心躍る部分と現代ファッションとを、どうジョイントさせるか、が。

(すでに公演が終わった)宝塚大劇場での反響はすごかった。ファンの方は私の顔を見ると「すばらしい衣装をちょうだいして」というんですね。「まあ、あなたにあげたわけじゃないのに」と思うんですけど、そういう熱烈なファンの方から「よかった」「うれしかった」「きれいだった」といっていただけたことが、この仕事の喜びでもある。

来年、芦屋で美術館を使った展示会をやる予定なんですが、そこで「シニョール ドン・ファン」の部屋を作りたい。舞台では遠くからながめるわけですが、こんどはそれを近くから見ることができるように。

ともかく、私の仕事の中で新しいジャンルが開けたと思っています。

−−イタリアファッションの味を取り入れたのか?

ミラノファッションにこだわっているわけではありません。いまのファッションだと感じてもらえれば、と思っています。今回のデザインのポイントのひとつは、肩のラインです。というのも宝塚の男役の衣装は基本的に肩幅が広い。私はそれを狭くして、代わりに丈を長くしてみました。それから部屋の中でくつろいでいるときのガウンは、着物スタイルで肩からひっかけるものに。これは自分のコレクションでも取り入れていたし、実はミラノのコレクションでも着物ふうのものがあったことが頭をちらりとよぎったのは事実です。

トップコンビ
2人が着ているのは、舞台衣装ではありません。念のため=東京都港区のホテル
娘役の衣装のほうは新しい着こなしをたくさん取り入れたつもり。たとえば最初のほうにコレクションの場面が出てきますが、あれは無縫製の筒のようなものを着ている。ニットの世界ではよくありますね。それから、ふつうなら肩だけを出すところを背中だけ出してみるとか。ファッションそのものはミラノとかパリとかということではなく、世界で同時に発生するものです。新しさは常に着こなしのほうにある。この舞台を見て、ご自分のおしゃれに取り入れていただけたらというパターンをいっぱい出しています。

メンズのほうも、スカーフやTシャツの使い方、皮のジャンパー…など。汐風幸さんが着ているブルゾンはメタルを打ち込んだもの。これはパンクで、いまのトレンドですね。スパンコールではなくてメタルでキラキラさせてみた。



それとね、紫吹さんには感動させられたことがありました。えんじ色のブルゾンにカーゴパンツをはいて出てくる場面がありますが、その中に重ね着してらっしゃるTシャツとネットTシャツは、ご自分でカットされた。こういう工夫は、どんどんやっていただきたい。宝塚のみなさんはいまのファッションについてよく理解されている。これはプライベートの服装を見ればわかる。そういう人たちから期待されながらデザインをしたのですから、ファッションモデルに着せるより、もっとおもしろい経験でした。

SUMiRE DATA
6月10日(火)
by  石井健
SUMiRE LINX
記事本文
大阪の制作発表
「日本の美を愛でる−」
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連載 産経新聞における主な宝塚関連連載記事は次のとおりです。
・東京本社が発行する毎週木曜日朝刊の「SUMiRE STYLE」
・大阪本社が発行する毎週月曜日夕刊の「The name of タカラジェンヌ」

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