桜や藤の花が咲き誇る春の宝塚大劇場は例年、フレッシュな初舞台生50人を迎えてにぎわうが、今年は宝塚歌劇創立90周年の記念日(4月1日)(関連記事:記念式典)も重なり、いちだんと華やいでいる。
雪組公演は専科の初風緑と宙組の水夏希が加わり、詩劇「スサノオ−創国(そうこく)の魁(さきがけ)−」(木村信司脚本・演出)と、グランド・レビュー「タカラヅカ・グローリー!」(小林公平原案、岡田敬二(関連記事:岡田敬二に聞く)作・演出)の2本立て。
「スサノオ」は、「古事記」に登場する最初の英雄、スサノオ(朝海ひかる)を主人公に、天の岩戸に姿を隠した姉のアマテラスオオミカミ(初風)、8つの頭を持つ大蛇ヤマタノオロチ退治などの有名な伝説をからめて、光の消えた大和の国の悲嘆や武力の虚しさを訴え、日本の国のあり方を問いかける。
両サイドに階段状に並んだ和太鼓で、大自然や人間の感情を表現する音楽(作編曲・甲斐正人)が強烈な響き。出演者全員が白の古代服で、民衆や森の木々、オロチなどさまざまに姿を変えるコロスとなって、全4場に出ずっぱりになる。ライトの目と木の葉の集合体でうねるオロチのシーンなど、斬新な工夫がいっぱいだ。
ただ、“木村流”の解釈による「平和のためならどんなことも見逃すのか」といった主張が強く出すぎて、作品が重苦しい。朝海のスサノオ像は自らの力に苦悩する憂愁の青年のイメージ。オロチの最後のいけにえとなるイナダヒメ(舞風りら)との淡いロマンスはあるものの、愛の力が感動に結びつかない。宝塚での、歌劇としての扱い方に疑問が残った。
「タカラヅカ・グローリー!」は90周年にちなんだ90人の大ラインダンスが最大の見どころ(関連記事:振付家・羽山紀代美に聞く)。世界でも宝塚だけでしか見られないスケールで、大人数で圧倒する魅力こそ歌劇、という思いを強くした。
5月10日まで。
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