宝塚歌劇団は13日、東京都内のホテルで記者会見し、来年4月に宝塚歌劇88周年記念公演として『宝塚グランドロマン「風と共に去りぬ」』(脚本・演出、植田紳爾 演出・谷正純)を上演すると発表した。平成6年以来、8年ぶりの再演だが、脚本は新たに書き下ろす。現在、雪組トップスターで来年2月から専科に移籍する轟悠がレット・バトラーを演じる。宝塚の劇場ではなく東京・有楽町の日生劇場を使う。記者会見した植田紳爾理事長の話は以下のとおり。
来年は宝塚宝塚歌劇団が88周年という、それを記念してマスメディアのみなさまがたの食指が動くような、興味をもつような企画をいろいろと考えて来年はやりたいなと、このように思って、6月ぐらいからいろいろな案を練っております。
これはその中のひとつでございまして、まだまだ興味をもたれるような企画で来年はやってまいりたいなと、このように思っておりますので、どうぞご期待をいただきたいと思っております。
この日生劇場の企画でございますけれども、これは東宝から使ったらどうでしょうといっていただきまして、いろいろ考えまして。
宝塚が本拠地であります東京宝塚劇場ができあがってから以来は長期でほかかの劇場で公演したことは、ございませんです。ただ、アニー・パイル劇場として(GHQに)接収されておりましたときには、ほかの場所で公演をした歴史はごさいますけれど、それとて、東京で(東京宝塚劇場を含めて)2カ所で(同時に)公演をすることは88年の 歴史の中で初めてのことでございます。
大変な仕事になるだろうとは思ったんですけれども、やはり新しい世紀、宝塚歌劇団が100周年に向けて歩みを始めるときには新しい活路、方法も模索する必要があるのではないかと思って決断した。
作品はたくさん候補が ございまして、実はきのうの夜にもほんとうにこれでいいだろうか、違う作品のほうがよくはないかということを会議をいたしました。ただ、日生劇場という舞台の機構、出演者、そういったことを考え合わせると、やはり「風と共に去りぬ」かなと決めた経過がございます。
この「風と…」は、「ベルサイユのばら」と並んで宝塚の財産になっておりますけれども、「ベルサイユ…」より再演の機会が多かったという大変に幸せな作品で、いままでにたくさんのスターたちがこの公演をやってくれております。
バトラーを轟悠ということになったんですけれども、いろいろ思い出してみますと平成6年に、「スカーレット編」で宝塚大劇場の舞台をあけましたが、そのときにスカーレットをやりました一路真輝と私とで、けいこ場の横の椅子に座って、轟がバトラーのけいこをやっているのをふたりでみていたことがある。
いまから考えますと、一路は「ボチボチ辞めようかな」という気持ちがあったんだろうと思うのですが、「先生、雪組のスターはだれがいいと思いますか」と一路に聞かれました。私はそのとき即座に、「これは轟だろうと僕は思うけどな」と、話をしたことがあるんです。そのときに一路の顔がパッと明るくなりまして、「それは絶対、私も賛成です。彼女は大変に宝塚を愛してますから、先生、これは重責を担うことができますよ。先生、ぜひとも応援してやってくださいね」と話をしたことがあるんです。
それがいま、こういうふうに、宝塚のトップスターとして轟が成長してくれたことを思いますと、あのときの話はいつまでも忘れないのですが、轟がトップになるときも、あるいは専科にいくことになったときも、轟ともその話をしまして。
一路にもこないだ「エリザベート」をやっておるときに楽屋にいきまして「専科へ轟をいかそうと思ってるんだ」という話をしましたら、「これは絶対いいですよ。宝塚を愛する情熱の強さは、イシ(轟の愛称)なら必ずやれますよ」という話をした思い出がございます。
それほど7年前にやったバトラー、この間に雪組から宝塚のトップスターとして十分に成長してくれましたので、このバトラーをたいへんに私は期待をしております。
また、この作品はアシュレという役が一番大事なのです。バトラーよりもアシュレにひかれていくスカーレットが大きなファクターになっておりますから、アシュレイがなかったら、ほんとうは通用しない。
ただ、組のバランスでいきますとトップの子がバトラーをやりましたら、どうしてもアシュレには下級生が回っていく。どうしても、なんか、おさまりが悪い部分を、僕自身が感じておりましたけれど、あるいはメラニーもそうで、彼女がいるからこの「風と…」の内容が深くなっていく。
難しい役なんですけれども、スカーレットが派手ですから、どうしても見栄えはいいんですけれども、どちらが難しいかというとメラニー、アシュレ。これがこの特別公演では、専科を充実させたために可能になったと、このように自負をしております。専科制度を充実させてよかったなということは自負しております。
ただ、公演の形でございますけれども、隣(東京宝塚劇場を指す)同士で競合して、同じようなものをやったら、これはアホかいなといわれるとお思います。違う形でやらないと、違う形の宝塚をこの日生劇場では作り上げないと、同じようなものを両方でやっててはせっかくやる理由にもなりません。
そういう意味ではここまでくるのに僕たちに決断が迫られたのは、それが果たしてできるだろうか。そういう違う形の宝塚をできるだろうかとということでございました。
ただ、幸せなことに隣で月組がやっておりますのは、「ガイズ&ドールズ」。ブロードウェーのミュージカルでございます。ブロードウエーミュージカル、ロンドンミュージカル、あるいは「エリザベート」のようにウィーンのものといろいろとミュージカルにも形がございますように、宝塚は宝塚の宝塚ミュージカルという形がございます。これは大正3年からやってきておりますので、世の中でいうミュージカルの中では一番古い歴史がある。それがいいか悪いかは別問題ですけれども、大正3年から80年間、宝塚は宝塚のミュージカルを作り続けてまいりましたし、多くのお客様に支持されてきたから、それができたのだと思っています。
たとえば、主題歌の使い方なんて全然違いますから、宝塚のミュージカルというのはひとつのスタイルがある。やはり、この機会に宝塚ミュージカルというものをもう一度検証したい、再確認したい、再自覚したい。そうすることによって隣の劇場とは違っていて、そうしていて宝塚である。そういうものができるんではないかなと考たのが、これをやってみようかなと思ったきっかけでございます。
宝塚ミュージカル。大先輩が作られて、伝統としてわれわれが継承してまいりました宝塚ミュージカルを、この機会にもう一度洗い直して、みなさまに見ていただきたいな。このように思っております。
これは、でも、大変な仕事だと思っておりますし、ここにおります(演出の)谷(正純)くんなどには大変な思いをさせるのだと思っておりますが、それをおそれていては、宝塚の進歩はないと思いますので、この機会に真しな努力で作り直してみたいなと、このように思っております。
88年の歴史の中で初めての挑戦でございます。
−−かつての香港公演が宙組を生んだように、この公演が専科だけの興行につながるのか
轟悠と檀れいを専科へということと同時ぐらいにこのお話がありました。僕の頭の中には、日生劇場が使えるのならば模索してもいいなという気持ちは常にありましたので、轟の発表のときに、とにかく来年1年をみてくださいと申し上げたと思うのですけども。頭の中には轟を使って何をしようかという気持ちがありました。
ただ、6組にする気持ちはない、といいますか、いまでも、5組になったために困っているのは、年間に2回、あるいは1回だけの公演しかない組もあるわけで、これはやっぱり、苦しい気はあります。舞台人は常に舞台からお客さまにみていただくことがもっとも大事なことなんで、そういう機会があれば、これからも、これを突破口として次に続いていける可能性はなきにしもあらず、ですけれども。
ただ、「風と…」が成功するかしないかにかかってくるので、これが成功すれば、また違う形で公演が増えていく。専科を中心にしてもいいですし、あるいはスケジュールのあいている組がもっと動いてもいいですし、やはりそれは、この公演にかかっておりますので、これが成功すれば次にどうしようかはいろいろと考えていこうと思っておりますけれども、ただ、いまはこの公演を成功させることだと思っております。
−−「風と…」の関西での上演計画は? 出演者数は?
宝塚は少なくとも1000人、できれば2000人近いお客様の入る劇場でなかったら、採算がとれませんので、関西でも2000人くらいのお客さまが入れる劇場から「お使いになりませんか」といっていただければ考えてもいいですけれども、いまのところ関西では不可能じゃないかなと思っております。
だいたい、この公演は40人でやろうと思っています。
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「初めての挑戦」と意欲を語った
植田紳爾・理事長=東京都港区のホテル
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宝塚歌劇88周年記念特別公演
宝塚グランドロマン
「風と共に去りぬ」
専科+雪組合同公演
4月6日-16日
専科+花組合同公演
4月18-29日
(水曜日は休演)
<座席券>
前売りは
宝塚友の会会員先行販売が来年1月中旬
一般前売りが来年2月中旬を予定
SS席8000円
S席7000円
A席5000円
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