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花組   愛華、大鳥の魅惑ペア    
03.03産経新聞夕刊 演劇コラムニスト 石井啓夫


 新劇場、第2弾。楷書(かいしょ)の芝居、草書のショーの組み合わせ。

 岡田敬二作・演出のロマンチックレビュー「アジアン・サンライズ」が傑作である。「21世紀はレビューの時代」を標榜(ひょうぼう)する作者の自信に溢(あふ)れた構成が目に楽しく、これまでのロマンチックシリーズの直線的な華美さが、曲線的な流麗さに変化している。音楽、ダンス、衣装…、アジア地域のエスニック性にこだわらぬファジー感がいい。

 沖縄メロディーのリズミカルな幕開きから、バリ、中国、タイ、また中国へとベースで繋がるアジアの神秘を歌と踊りでミックスする。極め付きが、天安門広場のラップがカンカンふうにパワフルな総踊りに移行していくシーン。”「夜来香」ロケット”もエキゾチック。

 フィナーレ、大階段上で春野寿美礼が朗々と歌う「蘇州夜曲」に乗って、深紅の中国服姿で踊る愛華みれ写真右大鳥れい同左=のペアダンスが魅惑的だ。アダルトな大鳥の色香を清廉な愛華が受ける。なによりも、このトップコンビの気品と香気が、宝塚の男役娘役の美的いやしとなって客席に温(ぬく)もりを伝える。

 芝居は、植田景子作・演出「ルートヴィヒII世」。女性演出家による大劇場作品は初めて。19世紀ドイツの実在の王で、夢想家として知られた数奇な運命を、史実に沿って美しく立体化した。ワーグナーに心酔し、城作りに精力を注ぎ、政務を疎んじたことで廃位に追い込まれる不運な王を、愛華が夢のような美しさで演じる。見どころは、その非日常性一点。

 宝塚の限界を意識したためか、作者の視点が様式美に流れ過ぎたことが、残念だ。

 25日まで、東京・日比谷の東京宝塚劇場。


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