宝塚歌劇団雪組の東京公演「宝塚幕末ロマン『猛き黄金の国』--士魂商才!岩崎彌太郎の青春--」(脚本・演出、石田昌也)「レビュー・ロマネスク『パッサージュ』--硝子の空の記憶」(作・演出、荻田浩二)が十一日、東京・日比谷の東京宝塚劇場で始まった。
今年元旦に開場した東京宝塚劇場で雪組公演が行われるのは、これが初めて。
同日は公演に先立つ午前十時から同劇場で舞台稽古が行われ、稽古終了後に星組トップスター、轟悠は次のように意気込みを語った。
「すでに(本拠地の兵庫県宝塚市にある)大劇場で公演を終えていることを前提に見ていただくわけですから『それと比べて進歩がない』といわれることのないよう、一人一人が肝に銘じて演じたいです」
『猛き黄金の国』は、本宮ひろ志の同名漫画が原作で、三菱財閥を興した岩崎彌太郎という経済人を主人公にすえた異色作。
原作は青年漫画だし、そもそも現実は権謀術数渦巻く世界だったと推測されるが、維新の時代に勤王でも佐幕でもなくビジネスにおのれの人生をかける彌太郎(轟悠)の夢と希望を軸に、坂本龍馬(絵麻緒ゆう)や沖田総司(蘭香レア)ら同じ時代にそれぞれのやり方で命を燃やした人物の生き方を交錯させることで、物語の焦点は未来だけをみつめた男たちの魂の純粋な輝きにしぼられる。
さらにいうと一人一人の純粋な夢に加えて当時、生まれたばかりの日本という国家に対する愛情も描かれている。前述のように彌太郎という経済人を主人公にすえて勤王でも佐幕でもなくビジネスの視点を通すことで、実は現代人により理解しやすい維新期のドラマであるので、人としてのモラルが崩壊し、国としての体裁を失いつつあるすべての現代日本人が、二十一世紀の未来を考え直すために必見の舞台かもしれない。