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雪組東京公演始まる
未来をみつめた男たちの魂の純粋な輝きは現代人必見だ   
010511 石井健
『猛き黄金の国』
『猛き黄金の国』=11日、東京宝塚劇場(撮影・内藤博)
 宝塚歌劇団雪組の東京公演「宝塚幕末ロマン『猛き黄金の国』--士魂商才!岩崎彌太郎の青春--」(脚本・演出、石田昌也)「レビュー・ロマネスク『パッサージュ』--硝子の空の記憶」(作・演出、荻田浩二)が十一日、東京・日比谷の東京宝塚劇場で始まった。

 今年元旦に開場した東京宝塚劇場で雪組公演が行われるのは、これが初めて。

 同日は公演に先立つ午前十時から同劇場で舞台稽古が行われ、稽古終了後に星組トップスター、轟悠は次のように意気込みを語った。  

「すでに(本拠地の兵庫県宝塚市にある)大劇場で公演を終えていることを前提に見ていただくわけですから『それと比べて進歩がない』といわれることのないよう、一人一人が肝に銘じて演じたいです」

 『猛き黄金の国』は、本宮ひろ志の同名漫画が原作で、三菱財閥を興した岩崎彌太郎という経済人を主人公にすえた異色作。

 原作は青年漫画だし、そもそも現実は権謀術数渦巻く世界だったと推測されるが、維新の時代に勤王でも佐幕でもなくビジネスにおのれの人生をかける彌太郎(轟悠)の夢と希望を軸に、坂本龍馬(絵麻緒ゆう)や沖田総司(蘭香レア)ら同じ時代にそれぞれのやり方で命を燃やした人物の生き方を交錯させることで、物語の焦点は未来だけをみつめた男たちの魂の純粋な輝きにしぼられる。

 軽やかに、しかし確かな新しい時代の生き方を示し、彌太郎に多大な影響を与える坂本龍馬(絵麻緒ゆう)=写真左

 彌太郎の商才を見抜いた三野村利左右衛門(成瀬こうき)=同右上

 いかにも軽い現代青年、矢島彌太郎(朝海ひかる)とガールフレンドのヒトミ(愛耀子)=同右下=だが…。(撮影・内藤博)

 また、物語の転換場面に現代の青年、矢島彌太郎(朝海ひかる)と四国遍路の紳士、神宮寺(美郷真也)との出会いと道中をからませる。この茶髪の青年の、維新の群像の夢と比べればスケールは小さい将来が、しかし、大団円の場面でひとつになるのも、見る者にある種のカタルシスをもたらしてくれる。

 こうした過去と現代の青春像が整然と交錯する物語が、コミカルで軽快なテンポで描かれねので実にそう快。あっという間に時間が過ぎる。

 さらにいうと一人一人の純粋な夢に加えて当時、生まれたばかりの日本という国家に対する愛情も描かれている。前述のように彌太郎という経済人を主人公にすえて勤王でも佐幕でもなくビジネスの視点を通すことで、実は現代人により理解しやすい維新期のドラマであるので、人としてのモラルが崩壊し、国としての体裁を失いつつあるすべての現代日本人が、二十一世紀の未来を考え直すために必見の舞台かもしれない。

『パッサージュ』の舞台稽古=11日、東京宝塚劇場
 『パッサージュ』は、衣装の豪華さ、明暗のめりはりのついた展開など、けんらんさに圧倒されてなんとも楽しい、美しい。さらに選曲がエキゾチックにすぎることもあるレビューにあって『パッサージュ』の選曲は趣味のよさで一貫している。

 喜劇味の和物とけんらんなレビューとの組み合わせというのは、もしかしたらものすごくぜいたくなのかもしれない。

 両作を通じて、轟の歌唱は圧倒的な存在感を放つ。



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