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  五月の海を泳ぐサカナ
稔&星奈 東京サヨナラ公演千秋楽に寄せて 
010515産経新聞夕刊  演劇コラムニスト 石井啓夫


 宝塚歌劇星組のトップコンビ、稔幸と星奈優里が六日、東京・日比谷の東京宝塚劇場『ベルサイユのばら2001−オスカルとアンドレ編−』の千秋楽を終え、東京のファンに別れを告げた。

 二人とも、八−十月の宝塚大劇場(兵庫県宝塚市)公演を残しているが、東京では最後の舞台である。

 トップスターの退団公演は、もう何十年も、東京が最終地だったから、こんどのように退団あいさつを聞いてもまだ、二人が宝塚にいると思うと何か、不思議な気がするが、向こうの千秋楽には多分、わたしは見に行けないだろうと思うと、六日は感無量だった。

 二人は、下級生時代から注目していたスターだった。

 稔は、昭和六十年初舞台の七十一期生。

 サヨナラのあいさつ文で自ら、丸顔の男役だったことを気にしていたと告白していたが、わたしには丸さが人間味の円さと重なり、笑顔が優しい気品ある男役姿で好きだった。初舞台のラインダンスの時、ニコニコしてちょっと太めで大階段を降りてきた姿が目から離れない。同期の愛華みれや真琴つばさ、轟悠たちもみな、コロッとしていたのだ。

 星奈とは、入団二年目の平成三年からよく話をする間柄だった。ダンスが得意な娘役で、ちょっと寂しげな表情に色気があり、しなやかさで群を抜いていた。

 この二人がコンビを組んで、何よりも素晴らしかったのがダンスシーンである。

 星組伝統のダイナミックな躍動感を引き継ぎ、『グレート・センチュリー』のボレロや『美麗猫』の緩急のデュエットなど、目が点になった。

 退団公演の『ベルばら』では、フィナーレでやっと白衣装で踊ったが、サヨナラを意識し過ぎ、デュエットとしてはおとなしかった。

 それが、いやされたのは、本公演後に組まれた稔の「サヨナラ・ショー」で、二人が「夜も昼も(Night and Day)」を披露してくれたとき。六月に全国ツアーで『風と共に去りぬ』に出演する二人。踊るバトラーとスカーレットのシーンをひと足先に踊って見せた。美しく、流麗。五月の海を泳ぐサカナのよう。

 これまで幾組ものコンビが客席を沸かせてきた宝塚伝統の名場面を、二人は定番のグリーンでなく、紫の衣装で踊った。憂愁と気品が持ち味のコンビ、最後のダンスはアダルトな色合いで締めくくった。

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