晴読雨読
Op.(オペレーション)ローズダスト  福井晴敏  文藝春秋 上下巻とも1,890円
Op.(オペレーション)ローズダスト 「亡国のイージス」などの作者の最新作は東京・お台場を舞台にした、この人らしいスケールの大きなスペクタル。

ネット財閥の役員を狙った連続テロが起こる。実行犯は入江一功をリーダーとする「ローズダスト」を名乗る5人組。警視庁の並河警部補は防衛庁情報本部の丹原朋希と捜査するうちに、入江と丹原の深い因縁を知る。ローズダストの計画は着々と進行し、ついにお台場が崩壊のときを迎えようとする。

分厚い上下巻。下巻に入って読むほうが少々息切れしてきても、物語のほうは手綱を放さず、猛スピードで突き進む。デテールの描写も気を抜かない。

くたびれた中年の並河とスーツ姿がまるで七五三のような幼い面影も残す丹原。この組み合わせはこの作家お得意というか、いささか定型化してきていなくもないが、若い読者がどう思うかは知らないが、年齢的に並河に近い僕などにはありがたい。これはくたびれた中年の再生の物語でもあるからだ。

そのように、さまざまな世代が楽しめるような細工、装置が巧みに盛り込まれているのも、この作家ならではだろう。

「波の花」からとられた「ローズダスト」という造語のイメージは、クライマックスのカタストロフィーへの伏線にもなっている。

お台場の地図がついていれば、より臨場感が増したかもしれない。

模倣犯容疑者Xの献身雪屋のロッスさん
晴読雨読(せいどく・うどく)は、ENAK編集部員が読んだ本を新旧問わず、気ままに紹介します。書評というより読書日記みたいなもの、でしょうか***晴れた日は田を耕し、雨の日は家で読書をする。そんな悠々自適な生活を意味する中国の故事成語「晴耕雨読」。あこがれるけど、現実はそうもいかない。でも、ちょっとした時間を見つけて本を開く幸せもいいもの。晴れても降っても…。 だから「晴読雨読」。

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