クリスタル・ゲイル「瞳のささやき」
大仏の眼と「瞳のささやき」
3月に入ると奈良・東大寺二月堂でのお水取りという、春の到来を告げる行事がある。東大寺では国宝の大仏さんも有名ですが、落語にも故円生師匠がやっていた「大仏の眼」という噺がある。
奈良の大仏さんが十数年がかりでできあがったのが、天平勝宝4年。4月9日の開眼式まであと3日と迫ったところで大仏様の右の目の玉がポロッと落ちてしまった。それも、大仏様のおなかの中に。
普請奉行が眼の玉を元に戻した者に莫大なほうびをとらせるというおふれを出すと、百姓ふうの男が、13歳ぐらいの子供を連れて「私ども親子で直す」とやってきた。見ていると子供が大仏によじ登り、落ちた眼のところにできた穴から腹から中に入り、落ちている眼の玉をもとに戻したまではよかったけれど、なにしろ自分が入った穴をふさいだのだから、外に出られなくなってしまった。
外でようすを見ている、父親ら大勢の人は「どこから外に出るのだろう」と心配そう。するとなんと子供は鼻の穴からでてきて観衆はいっせいに拍手。「利口な子供だ。目から鼻に抜けた」。これが、利口を「眼から鼻に抜けた」とする言葉のもとだそう。
落語では眼だが、歌詞では「瞳」なんて表現する。カントリー歌手クリスタル・ゲイルのヒット曲「瞳のささやき」は彼女の出世作。テレビドラマ「さよならをもう一度」(1992年フジ系)に使われたりして、日本でも大ヒット。77年にはグラミー賞を受賞。
このアルバムでゲイルは、映画「女はそれを我慢できない」の中でジュリー・ロンドンが妖艶にうたった「クライ・ミー・ア・リバー」を、コール・ポーターの名曲「イッツ・オール・ライト・ウィズ・ミー」をうたっている。男どもは心をくすぐられるのだ。細やかなる心遣いや複雑に揺れ動く女心の機微をうたわせたら見事。
そうそう。彼女のお姉さんで、同じカントリー歌手ロレッタ・リンも根強い人気があります。クリスタルとリン姉さんとを聴き比べたりしています。
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