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衣装デザイナー 任田幾英に聞く
(5)新しい様式美 追い続けたい
10月5日(木) 東京朝刊 by 田窪桜子
−−入団した当時はそうそうたる演出家がいましたね?
任田幾英 挑戦的な作品も多く面白かったし、鴨川清作先生らパワフルな演出家がいました。晩年の白井鐵造や高木史朗、菅沼潤といった先生方と一緒に仕事ができたのは、本当にありがたい経験です。舞台が作られていくとはどういうことか学びました。

−−その次の世代は?
任田 柴田侑宏、岡田敬二、草野旦、三木章雄先生たちですね。岡田先生はかつては社会派でメッセージ性の強い作品が多く、打ち合わせは喧々囂々(けんけんごうごう)、作品内容そっちのけで文学論やいじめ問題などを話して楽しかったです。

−−転機を感じたのは
任田 15年目ぐらいから、宝塚の伝統の重みをひしひしと感じるようになり、新しく何かを生み出していかなくてはならないという自覚が出てきましたね。「伝統、伝統」と言われますが、宝塚は決して同じことを続けているわけではないのですよ。岡田先生は新しい宝塚のあり方を探って、ロマンチック・レビューのシリーズに取り組んでいる。昔のまま一カ所にとどまってはいないのです。

−−歌舞伎などの伝統とはまた違うと?
任田 宝塚歌劇団も創立90周年を超え、女性だけの劇団としての様式美、宝塚ならではの美学があっていいと思います。一方で、常に何か新しいものを打ち出していかなくてはならない宿命もある。幸い出演者は青春のまっただ中、女性として一番キラキラしている世代ですから、その輝きが新しさを生み出す支えになっていますね。

−−新しくするとは?
任田 宝塚歌劇はお客さまも女性が多く、女性の感性が作品にずいぶん影響しています。女性が喜んで楽しめる世界を作らなくてはいけないのです。かつては、なよなよとした頼りなげなことが女性らしさでしたが、今はパンツルックで颯爽(さつそう)とした女性に新しい美しさがある。時代は感じている以上に早く変わっています。お客さまの持つ文化や美意識も変わっている。そういう感性を舞台に敏感に反映することが大事です。

−−今後は?
任田 宝塚の様式美をもっと明確にしたいですね。どうしたらそれができるか、今はまだ模索中ですが。もちろんぼく個人ではなく、演出家と一緒に作り上げることが必要です。今は、30代の荻田浩一とか20代の稲葉太地など、次世代の演出家から何かが生まれるのではと、手応えは感じていますよ。我々とのジェネレーション・ギャップのすき間に可能性があるのではないかと。もちろん、失敗もあるでしょうけれど、守ってばかりではいけない。21世紀の新しい宝塚の様式美を追い続けていきたいです。


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ここは宝塚記事のページです

(1)舞台衣装はメッセージ
(2)パリでひとめぼれ
(3)こだわりが独自の世界生む
(4)デザイン画 今も手書きで
(5)新しい様式美 追い続けたい


PROFILE
とおだ・いくえい 昭和14年大阪市生まれ。桃山学院大経済学部卒業後、昭和40年パリに遊学しファッションを学ぶ。翌年帰国し宝塚歌劇団に入団。42年、「アディオ・アモーレ」で衣装デザイナーとしてデビュー。これまで宝塚大劇場285作、バウホール157作、その他28作にかかわった。「ウエストサイド物語」、「凱旋門」、「ベルサイユのばら」「レヴュー誕生」などジャンルを問わず活躍している。