宝塚歌劇団は今年、創立90周年を迎える。さまざまなイベントがめじろ押しで、「100周年を視野に、過激に挑戦していく」(植田紳爾理事長)という意欲的な1年になりそうだ。中でも各組スターの他組への特別出演(特出)が大きな話題になっている。組の枠を超えて特出するスター6人は個性もさまざまで、充実の時を迎えた実力派ばかり。新たな風を期待される6人に、90周年への意気込みを聞いた。
●●●花組・瀬奈じゅん(平成4年入団) 私にしか出せない味を
昨年は「エリザベート」のルキーニ役で新境地を開き、バウ公演「二都物語」にも主演した。そして、今年は元日から宝塚大劇場の花組公演に出演、春日野八千代(かすがのやちよ)ら大先輩らと舞台に立った。
「90年を支えてくださった方々すべての思いを受けて、正月の舞台に立てることは本当に幸せです。春日野先生たちは、軽やかな踊りでも重みがあるんです。その重みはどこから来るのか考えたのですが、それは宝塚を愛し続けていらしたという経験と人間性だと思う。その人間味にすごくあこがれます」と話す。
“特出”する月組は初めてだが、今回は同期の男役が3人そろう(関連記事:貴城けいに聞く)。
「おこがましいのですが、私にしか出せない味もあると思うので、吸収するだけではなく新しい空気も入れたいなあと思っています。それが特出した組にも戻った組にも、相乗効果になると思うのです。同期とは初舞台以来、男役として初めて芝居をするので12年を経て生まれた個性も見えてくるのでは」
各組のスターがほかの組に特出する今年を、植田理事長は「オールタカラヅカの原点に戻る」と説明した。
「そのオールタカラヅカの意味もしっかりお見せしなくては。こんなチャンスはないので新しい風を私たちが吹かせられるように、パワーを持っていきます。どんな体験ができるか楽しみです」
●●●月組・霧矢大夢(平成6年入団) 責任感胸に初心へ戻る
宝塚人生のスタートをきった花組に特出する。ショーの振り付けを、英国の人気バレエダンサーでミュージカルも手がけるアダム・クーパーが担当するのが話題の公演。クラシックバレエを本格的に習っていた霧矢にとってあこがれの存在という。
「ご一緒することが恐れ多いぐらい。クラシックバレエを極め、さらにミュージカルの世界で活躍するクーパーさんの芸の幅広さ、深さにもあこがれます。男役を振り付けされるのは初めてでしょうから、宝塚の新しい面も引き出していただけるのではと思います」と緊張気味に話す。
昨年は思いがけない病気で、休演というつらい体験をした。2月の月組公演が東京での復帰作となる。演じるのは、“踊る王様”ルイ14世だ。
「みなさまの励ましがあったからこそ、この舞台に立てる。まず目の前のことを1つ1つこなしていくことを大事に、責任を持ってしっかり舞台を務めたいです」
初舞台はちょうど10年前。生徒全員が大階段に並び撮影した80周年の記念写真で、80期生は一番後ろだった。
「90周年の記念撮影では前から数えたほうが早くて、責任ある立場に立たせていただいているんだ、と身が引き締まりました。自分もこの歴史の重みの中の一部なんですね。だからこそ今年は改めて、初心に戻りたいと思っています」
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