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月組   東京公演「愛のソナタ」劇評    
01.27産経新聞夕刊 演劇コラムニスト 石井啓夫



ユーモア感覚にかけては宝塚一の真琴(左)と次期月組トップの紫吹

 元旦に新装オープンした東京宝塚劇場。旧劇場より500席近く少ない2,069席だが、満員の客席は連日、カミナリ拍手と爆笑で沸いている。

 まず、新劇場お披露目の祝祭舞「いますみれ花咲く」。歌劇団理事長、植田紳爾作・演出の日舞ショー。黒紋付き、緑のはかまの霧矢大夢が、若手男役らしいりりしい立ち姿で朗々とソロで歌いぞめると、宝塚のシンボル・スター、春日野八千代が、月組トップ、真琴つばさと次期トップに決まった専科の紫吹淳を従えセリ上がり、「天界の王」を舞う。

 宝塚ファンのあかし、指を使わず手のひらだけで鳴らす強烈音のカミナリ拍手が沸くのは、この時。貫録の春日野と和物に不慣れな月組生の共演だが、りんとしたスイセンにぬくもりの風が吹く風情。ほほえましい…。

 芝居「愛のソナタ」は、リヒャルト・シュトラウスのオペラ「ばらの騎士」を木村信司が、宝塚式オペレッタに仕上げた。借金まみれの男爵(紫吹=写真右)が財産目当てに選んだ花嫁への婚礼の使者=ばらの騎士として向かった真琴=(左)=の伯爵が、彼女にひと目ぼれ。伯爵の不倫相手、元帥夫人(美々杏里=歌唱美しく、好演)が自らの恋の終えんをさとって、伯爵と彼女を結び合わせる物語。

 本来のペーソスが消え、ドタバタふうに描かれている。ファンはスターのコミカル演技に沸きまくる。ユーモアセンスにかけては宝塚一の真琴。華麗な衣装とともに楽しませるが、本舞台は真琴の東京サヨナラ公演。明るい真琴らしいが、笑い過ぎた客席の千秋楽の反動の涙が目に浮かぶ。

 今回、木村の演出には注文が残る。が、ご祝儀舞台、祝い酒に酔って眺めるに限る。

 2月12日まで、東京宝塚劇場。


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