ENAK 流行+芸能 ENAK6月号
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エメラルドの大地 アイルランド北部を訪ねて
(2)海の幸と伝統の一杯
アイルランドの主食は、ジャガイモ料理だが、海の幸も豊富だ。なかでもオイスター(カキ)。日本のカキよりも大ぶりだが、レモン汁を絞って生で食べられる。アンコウやタラもメニューにあった。肉料理では、ラム肉が本場の味で人気だそうだ。

ドネゴールの湾口に港町、キリベッグス(Killybegs)が開けている。朝には市が立ち、鮮魚ばかりでなく地元で栽培された新鮮な野菜や果物も並ぶ。

地元の人でにぎわう市場
普段着の買い物客が多いなか、スーツを着込んだ初老の紳士がおり、思わず目を吸い寄せられた。夫人に頼まれたのだろうか。手にした買い物メモの上から順番に買っているためか、トラックの荷台から荷台へと右往左往し、その度に籐のバスケットが膨らんでいく。

港に並ぶ船のそばでは漁師2人が網を片づけていた。夜釣りでイカを捕っているそうだ。前日の午後8時に出港し、午前7時に帰港したばかりだという。 ジャムを買い、ブラックベリーやイチゴをつまみぐいしたら、朝ご飯の代わりになった。

ナンシーのバー
スリーブリーグを下山し、バスでさらにN56号線を北西に進み、グレンコラムキル(Glencolumbkille)から東へ向きを変え、蛇行するグレンリバー(Glenn River)を越え、アドラ(Ardara)の町を目指した。

アドラには300年も続くパブの名店「ナンシーズ・バー(Nancy's Bar)」がある。アイリッシュたちの食文化を支えるのがパブだ。アイルランド全土には、1万軒ものパブがあるそうだが、最近では日本のカフェに近い、明るくて広い店舗が人気だという。

「ナンシーズ」は、そんな流行とは無関係に威風を放つ。創業者は女主人、ナンシー・マックヒュー。現在は7代目にあたる“男主人”チャーリー(Charlie)が仕切る。

ナンシーの名は途絶えたのかと聞くと「姉がナンシーだよ」という返事。ひと安心。

次々とアイルランドの象徴、シャムロックが浮かび上がる
店内は薄暗く、狭い。たとえていえば海賊船の板張りの食堂の雰囲気か。奥にはおそらく増築したと思われる飲食スペースが広がっていたが、カウンターのある部分だけでは、アイルランドの大男たちが10人も集まれば息苦しくなりそうだ。それが、パブなのかもしれない。町の人々が集い、アイリッシュ気質独特のシニカルさで日常を論破する。

パブの目玉はもちろん、アイルランドを代表するビール、ギネス。ギネスの味はつぐ人の技術で左右される。パイントグラスを傾けながら7分目ほどまで静かに注ぎ込む。しばらくおいてから今度はグラスを傾けずに8分目まで足す。そして、ノズルを、注ぐのとは逆に押しながら泡がこぼれるまで満たしていく。チャーリーによると、これが極意だという。

グラスの側面からのぞいた白い泡はメレンゲのようにキメが細かく、陶器の肌のようになめらかだ。酸味がまったくなく、ほどよい苦味が喉を抜ける。チャーリーは、泡に絵を描くわざも披露した。白い泡にの上に、微量のギネスを注ぎ、その凹凸でアイルランドの象徴、シャムロックを浮かび上がらせた。

ウッドヒル・ハウス
「ナンシー」の名前を受け継いだ、チャーリーの姉、“ナンシー”は、「ナンシーズ・バー」から車でわずか2、3分の場所にアイリッシュ・フレンチのレストラン「ウッドヒル・ハウス(Woodhill House)」を開いているというので、会いに出かけた。

通り抜けながら願いごとをすれば叶うといわれる石のアーチ。その先にはウッドヒル・ハウス自慢のひとつ、英国式庭園が広がる
ウッドヒル・ハウスは17世紀から続いた名家ネズビット家の邸宅だったものを、ナンシーと英国人の夫、ジョン・イエーツが18年前に買い取り、レストランにした。

邸宅の9部屋分は宿泊可能に改装しており、レストランだけではなく、邸宅ホテルでもある。ウッドヒル・ハウスのように貴族の邸宅を改装したホテルは英国やアイルランドに多いそうで、マナーハウスと呼んでいる。

ウッドヒル・ハウスでは、レストランとバーを任されているナンシーの長男、ジェイムズが、アイリッシュコーヒーをいれてくれた。


ウイスキーをたらし、クリームをのせたコーヒー。日本で飲むと、ウイスキーのアルコールが強すぎたり、甘ったるいだけだったりと、なかなかおいしい1杯に出合えないが、やはり本場。こんなに飲みやすく、おいしいものだったのかと驚かされた。

英国式庭園もウッドヒル・ハウスの自慢だという。20メートル四方ほどの敷地を十字に4つのスペースに分け、生垣がそれぞれを囲む。正面奥、右の庭にはオレガノやパセリ、セージやレモングラス、ローズマリーなどさまざまな香草が栽培されており、料理にもふんだんに使われているという。自家栽培の野菜で客をもてなす姿勢がウッドヒル・ハウスには根づいている。

(Ryoko KUBO/久保亮子)

***第3回は、エンヤの故郷から父、レオが登場します。

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■WHERE TO VISIT 訪れる
Nancy's Bar (アドラ)
+353-74-9541187 (Tel)

■WHERE TO VISIT 訪れる
Woodhill House (アドラ)
http://www.woodhillhouse.com
+353-74-9541112 (Tel)
+353-74-9541516(Fax)

■WHERE TO EAT 食べる
Castle Murray House Htel (ダンキニーレ)
http://www.castlemurray.com
+353-74-9737022 (Tel)
+353-74-9737330(Fax)

すべての著作権は、産経新聞社に帰属します。
(産業経済新聞社・産経・サンケイ)
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[1]スライゴ 女神のブレスト
[2]ドネゴール 海の幸 自慢の一杯
[3]ドネゴール エンヤの故郷
[4]レタケニー 禁煙の国にて
[5]ダブリン タラの丘
[6]英リバプール ビートルズの故郷

N56号  ドネゴール・タウンやスライゴ・タウン近辺の国道は、EUの、スライゴ、ドネゴール支援の一環として建設された。1980年代、アイルランドはケルティック・タイガー(ケルトの虎)と称えられるほどの経済成長を遂げた。失業率は現在でも4〜5%を維持。当時は外資誘致にも積極的で、主に米国、日本、英国、ドイツ、フランスに対しては法人税を無料にするなどの歓迎ぶりだった。 沿道には黄色の花をつけた木々が目につく。西洋エニシダ(Gorse)だ。カキと同じくこちらも日本のエニシダよりもずっと大ぶりで、南仏では香水や染料の原料として利用されているそうだ。白い花をつけるナナカマドやサンザシなども咲き乱れる。また、背の低い枯れた枝木のような植物もよく見かける。ヒース(Heath)という名の植物で、日本ではエリカと呼ばれる。秋には小さな濃いピンクの花をつけ、野が一面、燃えるように染まるという。

スリーブリーグ(Slieve League)  海抜約600メートルの石の山、スリーブリーグ(Slieve League)。取材バスで、海抜300メートルほどの地点までいけ、そこから徒歩で、頂上を目指した。中腹までは石段があり比較的のぼりやすい。そこからも獣道のような小道が何本も完成されており、健脚な人なら休憩をとらずとも、20分ほどで頂上の高さにまでたどりつけるだろう。もっとも、休憩をとりたい気分にはならないだろう。放牧されているヒツジのふんが至るところに転がっているのだ。強い日差しに汗がにじむ。土の温度も高く、日差しを避ける場所はない。そんな中で足を止めると、ふんに蒸されているような気分になる。頂上から断崖を見下ろしたが、風の強い日は吹き飛ばされる危険もあるので、注意が必要とのこと。片岩、片麻岩、石英などからなる変成岩が堆積した石の山なので、落石も気がかりだった。

ガーデニングと泥炭層 日本でもガーデニングブームだが、アイルランドは習慣化している。本場、英国の影響も強いが、植物が育ちやすい穏やかで暖かい気候もガーデニングに適しているようだ。ただ、国土の14%を泥炭層が占め、限られた植物しか育たない土壌もある。 一方で、泥炭層はアイルランドの恵みでもある。ブロック状に掘り起こし、夏が終わるまで天日に干せば、炭となって燃料になる。今でも多くの家庭がこの泥炭燃料を暖炉にくべて、暖をとっているそうだ。西海岸沿いや内陸部に集中する泥炭層だが、取材中も多くの場所で天日干しの光景を目にした。また、アイルランドの川が黒く見えるのも雨水が、タンニンの多く含まれた泥炭層をくぐるためだという。ギネスビールの誕生の地であるだけ「川までギネス?」と驚くほど黒褐色なのだが、においもなく、川底が見えるほど澄んでいるため不潔なイメージはまったくない。


ジェイムズ流アイリッシュコーヒー 1.グラスは温めておく *最後にトッピングする生クリームが沈みにくいように 2.グラスにスプーンで2杯半、黒砂糖を入れる *必ず、黒砂糖を使用。上白糖などは風味を損なう 3.落としたてのコーヒーをグラスの6分目ほどに注ぐ 4.ウィスキーをシングルの量(97ml)で注ぎ、棒で混ぜる 5.さらに少量のコーヒーを加え、最後に生クリームをグラスのふちまで盛りつける ジェイムズは、ウイスキーに「ブッシュミルズ(Bushmills)」という銘柄を使用。他にも「ジェイムソン(Jameson)」などもあるが、アイリッシュコーヒーのまろやかさを引き立てるのに、いちばん適しているそうだ。 アイリッシュコーヒーの発祥は、アイルランド西部の空の玄関、シャノン空港だという。飛行機を待つ客が寒さに耐えかねてコーヒーにウイスキーを流し込んだのが始まりだという。

取材協力
●アイルランド政府観光庁
アイルランド政府観光庁


●ヴァージン・アトランティック航空


●bmi航空

機材協力
●ペンタックス
ペンタックス