ENAK 流行+芸能 ENAK6月号
spacer.gif
spacer.gif
spacer.gif
ENAK流行+芸能 産経Web > ENAK > index > 記事
spacer.gif
spacer.gif
spacer.gif
エメラルドの大地 アイルランド北部を訪ねて
(3)エンヤの故郷
エンヤの父、レオが営むバー「レオズ・タバーン」
取材バスは、N56号線の北上を続け、ドネゴール州のメナレック(Meenaleck)という集落にでた。中心部でさえ、数えるくらいの店が軒を連ねるばかりの小さな村だ。

そんな村の辻にこんな看板が。「House of Leo's Tavern CLANNAD&ENYA」(クラナドとエンヤ レオのわが家)

ここは世界的な歌姫となったアイルランドの歌手、エンヤが生まれ育った村なのだ。「クラナド」は、エンヤの姉、モイアが結成した音楽グループの名前で、レオは、エンヤらの父親。そのレオ・ブレナンがこの地で営むパブが「レオズ・タバーン(Leo's Tavern)」というわけだ。

レオ・ブレナン
レオは1925年、スライゴに生まれた。両親と兄弟の家族6人は1940年代から、アイルランドやスコットランド各地のダンスホールを演奏しながら旅を始める。しかし、60年代からのラジオ、さらにはテレビの普及とともにダンスホールでの生演奏の人気にかげりが見え始めた。

一家は演奏のできるパブを求めて、アイルランドでも比較的、開発の遅い北部へと移ってきた。その結果、ドネゴールにたどり着き、店を開いて36年になる。

店は週末ということもあって、若い家族連れやカップルでにぎわっていた。壁には愛娘エンヤや、「クラナド」に贈られたゴールドディスク(ヒットに対してレコード会社から送られる記念品)が飾られている。

子供たちの成功とは別に、レオを慕ってやってくる開業当時からの常連も多い。この日は、近所に住む新婚カップルがランチを食べに来ていた。レオは早速、マイクを握ると、客たちにカップルを紹介。お祝いに、と1曲プレゼントした。レオが伴奏し、息子が歌う親子デュエットも披露してくれた。エンヤも含め、9人の子どもに恵まれたレオ。うち1人の息子がレオの店を手伝っている。

地元の客からも愛されるレオ。フロアよりもステージを好む根っからのバンドマンだ
「女の子が5人、男の子が4人。エンヤのことは、娘の1人としてかわいがったよ。だが、どの子もかわいい。今ではそれぞれが巣立っていってしまったけどね」

終わったばかりのステージの余韻がさめやらぬレオは、コップの水を飲み干し、父親としての顔を慌てて引っ張り出す。

エンヤが、この店にくることはあるのだろうか?
「私たちが(ダブリンにある)彼女の家に遊びにいくよ。ちょうど3週間前にも家族で集まったところだ」

「豪邸だからね」と、冗談めかして笑う。小さな子どもにとっておきの昔話を聞かせるかのように、顔を近づけ、エンヤとそっくりの、丸く大きな瞳でこちらをのぞきき込みながら話す。

「娘の歌は、もちろん聴いているよ。『オリノコ・フロウ』が大好きだ。まだ内緒だけど、今、新しいアルバム作りに励んでいるそうだ。あの子の曲はクリスマスによく合うから、もしかするとそのころに発表されるのかもしれないね」

「オリノコ・フロウ」も収録されているエンヤのファーストアルバム「ケルツ」
エンヤのみならず、ケルト音楽自体が世界的に人気を博していることについては、「世界中にアイリッシュ移民が暮らしていることを思えば、支持される理由も同じくらい世界にあるということではないかな」という見解を披露した。

現在、アイルランド移民はその子孫も含めて世界に7000万人いるといわれる。うち米国に4000万人。英国に1000万人。国の人口が390万人というから、海外に20倍の数が暮らしていることになる。

「私はこの店で、40年前に歌っていた曲を、今も歌っているけど、いまだにちゃんと歌詞を覚えているよ」

人生の大部分を音楽とともに生きたレオ。話の端々に自らの一座を率いたころの苦労話が顔を出す。有名人の父としてよりも自ら音楽家の1人としての表情で、話を結んだレオ。この日は、18世紀のアイルランドの盲目の吟遊詩人、オーキャロランのレパートリーや、「ダニー・ボーイ」など5曲をアコーディオンを弾きながら歌ってくれた。

車窓から見えた雲。まるで空を包みはじめるようだった。メナレックの村で
ところで、レオはエンヤの歌詞について、グウィドー(エンヤの生まれた地方)の自然が影響していると分析してみせた。なるほど彼女の歌詞には、自然に語らせるものが多い。「1日に四季がある」と言われるほどアイルランドの天候は移ろいやすく、自然の気配を日本人より繊細に感じとっているのかもしれない。


草むらに寝転がる恋人たちは
空を見上げ
ただ、雲がどこへ流れていくのかを見つめている
空を見上げ
そして気づくのだ
ちりも日の光でさえも
空をこんなにも青くしていることを
エンヤ「flora's secret」より


(Ryoko KUBO/久保亮子)

***第4回は、貴族の邸宅をホテルにしたマナーハウスをご紹介。

top
■WHERE TO VISIT 訪れる
Leo's Tavern (メナレック)
+353-74-9548143 (Tel)

すべての著作権は、産経新聞社に帰属します。
(産業経済新聞社・産経・サンケイ)
©2004.The Sankei Shimbun All rights reserved.
[1]スライゴ 女神のブレスト
[2]ドネゴール 海の幸 自慢の一杯
[3]ドネゴール エンヤの故郷
[4]レタケニー 禁煙の国にて
[5]ダブリン タラの丘
[6]英リバプール ビートルズの故郷

グレンヴェー国立公園 レオの店を後にした移動のバスは、R251号線に入った。正面左手から標高749メートルのエリガル山(Erringal)。右手奥から標高680メートルのスリーブ・スナハト山(Slieve Snacht)が出迎える。ドネゴール2大高峰だ。20キロほど進むと、グレンヴェー(Glenveagh)国立公園に出た。 1万7000ヘクタールの広大な敷地には、5000種類以上の動植物が生息し、グレンヴェー城や、グレンヴェー庭園などもある。 敷地内には、グレンヴェー城を中心にいくつかの散策コースがある。湖畔を眺めたり、本格的な英国式庭園や温室で過ごすのもいい。カフェも常設されており、簡単な軽食もつまめるので、一日をピクニック感覚で過ごす家族連れも目立った。 園内でも最も見晴らしのいいビューポイントへは40分ほどの登山となる。ただ、木が生い茂るような山ではないので、歩きながらの視界が広く、しばらくすればベイ湖(Beagh)全体が見渡せるようになる。 ビューポイントは岩山のようで、さえぎるものがなく風が強い。対岸の山には山肌をキャンバスにして、雲が大きな陰を落としていた。この付近はおそらく2日目に紹介した泥炭層であったにちがいない。小道を逸れて歩くと、足が地中にめりこんだ。95%は水分という泥炭が乾燥し、地中に空洞ができているのではないかと思う。地表の草がカモフラージュとなって踏み込むと足をくじきかねない。何度かひざ下くらいまでの深い穴に落ちた。

取材協力
●アイルランド政府観光庁
アイルランド政府観光庁


●ヴァージン・アトランティック航空


●bmi航空

機材協力
●ペンタックス
ペンタックス