ENAK 流行+芸能 ENAK6月号
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エメラルドの大地 アイルランド北部を訪ねて
番外編 ビートルズの故郷へ
マジカル・ミステリー・ツアー
「クレオパトラの鼻がもう少し低かったら、世界の歴史は変わっていたのかもしれない」と言われるように、世の中にはさまざまな“ヒストリカル・イフ”がある。英国がアイルランドに侵攻していなければ、20世紀軽音楽の金字塔、ザ・ビートルズは誕生していなかった−−かもしれない。
リバプールの町にはビートルズゆかりのオブジェが溶け込んでいた。公園の丘の「イエロー・サブマリン」の模型

4人のメンバーのうちジョン・レノンをはじめ3人が、英国の圧政を逃れて英国本土に渡ったアイリッシュ移民の子孫なのだ。彼らが生まれ育った英国の港町リバプールは地理的にもアイリッシュ海峡を隔てて海路でアイルランドに近く、今でも住民の4割をアイリッシュ移民が占める。

アイルランドの旅の番外編として、そんなビートルズの故郷、リバプールを訪ねた。

ビートルズ関連商品専門店「ビートルズ ストーリー」の入り口でポーズをとる観光客
リバプールは、アイリッシュ湾にのぞむ港から緩やかな丘が広がる静かな町だった。中心部は、徒歩で十分に楽しめる。まずは海岸沿いに広がるポートタウン、アルバート・ダック(Albert Duck)を目指した。ここには、ビートルズ関連商品専門店「ビートルズ ストーリー(Beatles Story)」がある。

店内は、ポスターからマグカップ、キーホルダーなどファンなら買い占めたくなるような商品がずらり。感心したのは、ベビー用品の品ぞろえ。ジョンのイラストが印刷されたおしゃぶりからよだれかけ、Tシャツなどが充実しており、いかに幅広いファンがいるかを改めて思い知らされた。

さて、この店でメンバーゆかりの地をめぐるバスツアー「マジカル・ミステリー・ツアー」への参加も申し込める。店のサイトでも受け付けているので日本から事前申し込みを試みたが、なぜかうまくいかなかったので、前日、店頭で申し込んでおいた。

ツアーバスの横で記念撮影する参加者。米オハイオ州から来たという
ツアーバスは午後2時半にこの店から出発する。発車10分前に行くと、すでに参加者たちで店の入り口は大にぎわい。さすがに年配の人が目立つ。黄色いバスがやって来た。ボディには大きく「Magical Mystery Tour」の文字。ビートルズがテレビ用に作った映画「マジカル・ミステリー・ツアー」に出てくるバスに似せた外観に、参加者は興奮を隠せない様子で乗り込む。

定刻どおりに発車。ガイドのまくしたてるような挨拶とともに、早速ビートルズの「マジカル・ミステリー・ツアー」が車内に流れる。すると、参加者全員が大声で歌い始めた。「昨日の参加者の声のほうが大きかったぞ!」とガイドにあおられ、合唱はさらに大声に…!

バスは町の中心部を抜けて10分ほどで、最初の名所、リンゴ・スターが通った小学校を通り過ぎる。「うちのドライバーもここの卒業生だよ!」とのガイドのこぼれ話に参加者がどっと沸く。

ガイドは参加者に、どこから来たのかを尋ね、挙手させた。米国からの参加者が圧倒的。続いて英国各地。さらにほかの欧州各国。日本人は記者ひとりだけだった。

その記者の隣席には、巨漢の米国人男性。車内に「イン・マイ・ライフ」が流れると、なんと目に涙をためてつぶやいた。「僕の一番、好きな曲だ」。彼はビデオカメラを手にナレーションを交えて車内を撮影しながら、ジョンの歌声に合わせて静かに歌い始めた。

やがてバスが停車したのは、歌の題材にもなった「ペニー・レーン」。ファンたちはバスを飛び降り、壁に書かれた「Penny Lane」の文字の横で思い思いのポーズをカメラに向けた。

「ペニー・レーン」の歌詞に出てくる散髪屋も銀行もこの一角にある
この通りには、1995年に発表された「フリー・アズ・ア・バード」のプロモーションビデオが撮影された場所もある。再び、バスが走り始めると、ガイドがその建物を指し示す。あれが、歌詞に出てくる銀行、理髪店…。

その間、車内に流れる曲はもちろん「ペニー・レーン」。行き交う人が、歌詞にあるのと同じようにバスに向かって手を振る。このバスツアーは、土地にすっかり溶け込んでいるようだった。

ジョージの生家(手前の玄関)
次に降車したのは、惜しくも2001年に亡くなったジョージ・ハリスンの生家。すると、生家に入ろうとする人が。ハリスン家の一族かと思わせたのは、実は帰宅してきた隣人で、こういうユーモアは、ビートルズのメンバーにも通じる。

走り出したバスで、ガイドは、ビートルズにまつわるクイズを始めた。

「彼らのラストコンサートはいつ、どこで?」。参加者の手が一斉に挙がる。指名されると自信たっぷりに叫ぶ。「1966年8月29日。サンフランシスコのキャンドルスティック・パーク!」

ジョン・レノンがミミ伯母さんと過ごした家(写真左部分)
「では、最後のパフォーマンスはいつ? どこで? 締めくくった曲は?」(答えは、1969年。アップル・サビルロウビルの屋上。最後の曲は「のっぽのサリー」)

挙手の勢いは変わらない。圧倒されるばかり。

ジョン・レノンが幼少期からデビューするまで過ごしたミミ伯母さんの家を通る。すでに記念館として誰も住んではいない。座席から立ち上がってのぞいた。

「ストロベリー・フィールズ」の正面玄関
そして、バスが止まったのが「ストロベリー・フィールズ」。少年時代の回想を込めた名曲「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」の題材になった孤児院だ。ジョンは、ここの庭の木に登って遊んだとされるが、なるほど、秘密の庭園のような風格が漂っている。バスを停めたら渋滞を引き起こしてしまうほどの細い道路沿いに正面ゲートがある。

「記念撮影は手短に!」と言われ、参加者たちは名残惜しそうにバスに乗り込んだ。車内に「ストロベリー・フィールズ」が流れ始めると、これまでとはうって変わって、車内は静まりかえった。それぞれがの青春時代の思い出に浸っていたのだろうか。

セイント・ピーターズ教会
バスはビートルズの前身バンド、ザ・クォーリーメン時代にジョンたちが演奏したことがある「セイント・ピーターズ教会(St.Peter's Church)」の前を通り、ポール・マッカートニーの生家で停まった。

下校時だったのか、制服姿の子どもたちが手を振りながら通り過ぎていく。

ポールの生家は2階建ての長屋風で、10軒ほどがひとつの箱のように並んでいる。数軒先の家から老婦人が出てきたので、低い垣根越しに尋た。

「ポールと面識はありますか?」。意外な答えが。「小さいころからよく知ってるわ。有名になってからもここへ…そう…7回は戻ってきるわよ」

ポールが育った家(黒い扉の家)
7回というのがあまりにも具体的すぎて、なんだか笑いがこみあげてきたが、いずれにしても、この婦人にとって、ポールは今でも“ポール少年”のままなのだろう。

バスは走る。ガイドの案内は止まらない。ここが、ジョンの生まれた病院。ここはジョンの先妻、シンシアがアルバイトをしていたという食料品店。ファン思いというか、微に入り細をうがつツアーの構成には感心するばかりだ。

そうしている間にも車内では「イマジン」「レット・イット・ビー」「ロング・アンド・ワイディング・ロード」と曲が流れる。静かな曲調に合わせるかのように穏やかさが車内を支配し始めると、バスはペニー・レーン通りに再びさしかかり、町の中心へと帰ってきた。

気づけば、記者の隣席の巨漢男性のひざのうえには、ビデオカメラのほかにデジタルカメラとフィルムカメラまで。“聖地”をしっかりと記録したそれらを宝物のように大切そうに抱えているのであった。

1971年に閉鎖した「キャバーン・クラブ」の壁はメンバーをはじめ、ビートルズを愛するアーティストたちによって保存されている
最後の停車場所は、ビートルズが下積み時代にギターをひたすらにかき鳴らし、のどをからしたライブハウス「キャバーン・クラブ(Cavern Club)」。ここで解散だ。午後4時半。約2時間の魔法がとかれた。

(Ryoko KUBO/久保亮子)



■WHERE TO BUY 買う
Beatles Story(リバプール)
http://www.beatlesstory.com
年中無休。午前10時から午後6時まで。
Britannia Vaults, Albert Duck, Liverpool
44+151-709-1963(Tel)
44+151-708-0039(Fax)

■WHERE TO VISIT 訪れる
The Mathew Street Gallery(リバプール)
31 Mathew Street, Liverpool
http://www.lennonart.co.uk

■WHERE TO EAT 食べる
Lucy in the Sky with Diamonds(リバプール)
Mathew Street, Liverpool
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(産業経済新聞社・産経・サンケイ)
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[1]スライゴ 女神のブレスト
[2]ドネゴール 海の幸 自慢の一杯
[3]ドネゴール エンヤの故郷
[4]レタケニー 禁煙の国にて
[5]ダブリン タラの丘
[6]英リバプール ビートルズの故郷

マシュー・ストリート・ギャラリー マシュー・ストリートは、ビートルズ通りといっても過言ではない。1971年に閉店した、ビートルズ無名時代の拠点「キャバーン・クラブ」の壁が残り、その向かいに彼らの偉業をたたえて新しく誕生したショップ兼クラブ「キャバーン クォーター(Cavern Quarter)」がある。 さらに通りをスタンレー通り(Stanley St.)に向かって進むと、すぐの右手の建物1階にカフェ「Lucy in the Sky with Diamonds」がある。建物の中でも奥まった場所に店があるが、通りに看板が出ているので迷うこともないだろう。店内は、ビートルズのポスターが天井にまで張られていたが、スタッフが中年の女性ばかりだったせいかごくふつのう町の喫茶店という雰囲気。「Lucy−」の向かいの建物2階にギャラリー「マシュー・ストリート・ギャラリー(The Mathew Street Gallery)」がある。ビートルズの写真をメーンで飾るギャラリーだが、訪れたときは、クイーンやデビッド・ボウイなど英国ロックのスターたちの写真も並んでいた。いずれも彼らのお抱え写真家といわれたミック・ロック(Mick Rock)の作品で、どのポスターにもご当地ならではの質の高さがうかがえる。階段を下りて隣のビルの半地下1階。ここには主人が趣味で始めたようなビートルズのグッズ店がある。入り口には、ジョン・レノンの愛息、ショーンが訪れたときのスナップが飾られていた。レコードや雑誌などマニア向けの品ぞろえだった。


マジカル・ミステリー・ツアー インターネットでも予約を受け付けているが、前日までにショップ「Beatles Story」で直接、申し込むほうが確実のよう。店内にはビートルズの成功までの足跡をたどれるミュージアムも併設。入場料は、大人が7.95ポンド(約1600円)。子供は4.95ポンド(約1000円)。少々、高めだが、これがなかなかおもしろい。それぞれ時代の時代を象徴するものが置かれているのだが、なかなか芸が細かい。例えば、無名時代のキャバーン・クラブの倉庫や、「プリーズ・プリーズ・ミー」で米国のヒットチャート誌ビルボードの1位に登場した際のラジオ局の様子、1964年の米国初上陸を記念して彼らが搭乗した飛行機の座席、ビートルズを主人公にしたアニメーション映画「イエロー・サブマリン」に出てくる黄色い潜水艦の艦内…といった具合。最後はジョンの“白い部屋”で、ビートルズ解散後のジョンの名曲「イマジン」の宣伝用映像にも登場する白いピアノが象徴的に置かれていた。ビートルズを知らない子どもでも十分に楽しそうだ。実はすべてレプリカだが、ギターや衣装などのいくつは、所有するコレクターから借りたもので、それらはショーケースに入って展示されている。

取材協力
●アイルランド政府観光庁
アイルランド政府観光庁


●ヴァージン・アトランティック航空


●bmi航空

機材協力
●ペンタックス
ペンタックス