ENAK 流行+芸能 ENAK6月号
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エメラルドの大地 アイルランド北部を訪ねて
(5)車でタラへ
「タラへ帰ろう」
タラの丘に立つ聖パトリック卿の像。5世紀、アイルランドの地に初めてカトリックを布教した
アイルランドでどうしても訪れたかった場所がある。首都ダブリン郊外にあるタラの丘(Hill of Tara)だ。「タラ」と聞いて米作家、マーガレット・ミッチェルの「風と共に去りぬ」を思い浮かべる人もいるだろう。米国の南北戦争を舞台に、たくましく生きる女性、スカーレット・オハラの奮闘を描き、映画にも舞台にもなっている名作と、アイルランドのこの丘との関係は何か?

「風と共に去りぬ」は、マーガレットが少女時代に母方の祖母から聞かされた戦地の悲劇が基盤になったといわれる。

その祖母の父親は、アイルランド移民として米南部のアトランタ州へ移り住んだ。英国の長年にわたる圧政に耐え、やせた土地を耕してきたアイルランド人は「不敗の民」と呼ばれるが、マーガレットはスカーレットにそんなアイルランド人の精神を託した。

スカーレットの姓「オハラ(O’Hara)」はアイルランドの名家に多い名前だ。そしてスカーレットが生まれた土地を、アイルランドの古代上王の聖地があった「タラ(Tara)」と重ねた。物語のクライマックス、家も財産もすべて失ったスカーレットは毅然と言い放つ。「タラへ帰ろう」

見過ごしやすい標識。茶色に白抜きの文字で地名や名所が書かれている
アイルランドの旅、最終日。ダブリン空港からレンタカーで、40キロほど北に位置するタラを目指した。M1号線を走り、タラまで一直線のN3号に入った。アイルランドの交通は日本と同じ、「車は左、人は右」だから運転はしやすい。

レンタカーは日本車、なかでも日産車が目についた。ただ、2車線かと思うと1車線に減っていたり、3車線に増えていたり。あるいは中央線の判断がつきにくいのには、慣れが必要そうだ。

タラの丘へ続く小道
また、標識が驚くほど小さい。車を借りる時に、「タラの看板は、40キロほど先の左手に小さくあるから見落とさないように」と忠告された。景観を楽しみたいところだが、目的地までは気を抜けなかった。さらに交差点はロータリー式なので、車は中心から行き先へとはじき出されるように通過しなければならない。

幸い見落とすことなく、タラの看板をみつけ、N3号線を左に折れると、いままでとはうって変わって、両脇に木立が連なる農道のような静かな小道になった。なだらかな傾斜の先にタラの丘が続く。日本人の団体客が観光を終えて、観光バスに乗り込むのが見えた。

広がる田園風景。いたるところに牛のふん。あまりの量で、臭いもきつい。入り口近くの観光案内所に寄り、壁の資料を読んだ。1992年に始まった遺跡調査によると紀元前1200年から後500年に栄えた地とある。

丘に点在する古代ケルトの遺構は芝の目をよむように探す
タラには、アイルランド4地方(アルスター、コノトー、レンスター、マンスター)の総支配者である上王が居を構えた。現在は、即位の儀式や予言を行ったとされる石と、墓のあった痕跡がいくつか残っているだけで、のどかな広い丘陵といった印象だ。

たが、タラは19世紀にアイルランドに独立運動の芽吹きをもたらした指導者、ダニエル・オコンネルが民衆とともに決起した地でもある。マーガレット・ミッチェルが、スカーレットに託して、遠い先祖を思ったように、海外で移民として暮らすアイルランド人にとっての心のよりどころであり、誇りそのものなのだろう。


旅の締めくくりとして、アイルランド人のねばり強さや寛容さ、優しさや知恵のすべてに脈づく「ケルトの精神」を見つめなおすのにふさわしい地だった。

ところで、5日間のアイルランド滞在中、何度か、無意識におじきをすることもあったが、欧米ではややもすればちゃかされることもある、この日本独特の作法が、あまり違和感もなく受け入れられていたように思える。道路を横断するために車の流れを止めたときもしかり。古代ケルトの魔法がいまだ意識の底に生きていそうなこの国の人たちは、こんなふうに思ったかもしれない。

「どうせ、また妖精のいたずらだろう」

(Ryoko KUBO/久保亮子)

***アイルランドの旅は以上です。次回は、番外編として英国リバプール〜ビートルズの故郷〜を紹介します。15日(火)掲載予定です。

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■WHERE TO VISIT 訪れる
Derry(英国領 北アイルランド)
http://www.derryvisitor.com

■WHERE TO STAY 泊まる
The Fitzwilliam Hotel (ダブリン)
http://www.fitzwilliamhotel.com/
+353-478-7000 (Tel)
+353-478-7878 (Fax)

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[1]スライゴ 女神のブレスト
[2]ドネゴール 海の幸 自慢の一杯
[3]ドネゴール エンヤの故郷
[4]レタケニー 禁煙の国にて
[5]ダブリン タラの丘
[6]英リバプール ビートルズの故郷

ニューグレンジ タラの丘からN51号線を東に30分ほど行くとたどり着く、紀元前3000年頃の古墳で、世界遺産に登録されている。遺跡保存のため、入場者制限があり、1人の場合はグループツアーへの参加手続きが必要だ。低いドーム型の古墳は、直径88m、高さ15mもある。興味深いのは、この時代の人々が天文学の知識を持っていたことだ。中の王の墓につながる羨道は、冬至の日だけ入口の石の隙間から光が差し込み、照らし出される設計になっている。


トリム城 ニューグレンジからN51号線をナヴァン(Navan)方面に戻り、R161号線に乗り継げばそのままトリム城(Castle Trim)の遺跡につながっている。ここは13世紀初めにノルマン人によって建てられた3階からなる城だ。城内にはボイン川が流れ、地元の家族連れが犬に水浴びをさせていた。要塞の一部を入り口の受け付けとして改築しているため、係員が当時の城の門番のように見えてくる。トリムの町を歩いてみるのもいい。通りの空には、運動会のような小さな旗が凧のように飾られており、かわいらしい。遠くに行かない限り、どこからでもトリム城が見えるため、京都に似た雰囲気も感じた。


ドライブ事情 アイルランドの国土面積は北海道とほぼ同じ。車で島内をドライブしながら旅をするのもオススメだ。1日(24時間)レンタルなら、約8000円。首都ダブリンは渋滞がひどいが、それ以外であれば交通量も少なく、走りやすい。また、郊外のホテルは敷地が広いため、駐車に困ることもない。小さな村に入ると、アイルランドの人々の日常ものぞける。サマータイムなどを利用すれば、午後10時半くらいまでは日があるので、1日の行動範囲も広がる。

取材協力
●アイルランド政府観光庁
アイルランド政府観光庁


●ヴァージン・アトランティック航空


●bmi航空

機材協力
●ペンタックス
ペンタックス