晴読雨読
袋小路の男  絲山秋子  講談社 1,300円
Op.(オペレーション)ローズダスト 高校時代、ひとつ年上の先輩、小田切孝に恋をした私。成績がよくて、そして不良の彼には交際している女性がいる。たまり場のカフェで過ごすうちに会話が生まれ、すれ違いのなかに妙な絆が芽生える−。が、大学を卒業し、社会人になってしばらくぶりに出会った小田切は作家を目指しているという。再び、私の心が揺れ始めた。

授業をさぼり、たばこや酒を覚えながら過ごした青春。同様に変化に乏しい社会人生活。そんななかで、私と小田切のつかず離れずの関係はが続く。古典文学にみられたおぼれるような恋や深みにはまった愛とは異質の恋愛観が漂い、現代の若者の器用さと壊れやすさとが不安定に同居している。同時収録されている表題作の続編「小田切孝の言い分」で胸のつかえがとれるかもしれない。

著者は昭和41年生まれ。今年1月、「沖で待つ」で第134回芥川賞を受賞した。

模倣犯容疑者Xの献身雪屋のロッスさんオペレーション・ローズダスト
晴読雨読(せいどく・うどく)は、ENAK編集部員が読んだ本を新旧問わず、気ままに紹介します。書評というより読書日記みたいなもの、でしょうか***晴れた日は田を耕し、雨の日は家で読書をする。そんな悠々自適な生活を意味する中国の故事成語「晴耕雨読」。あこがれるけど、現実はそうもいかない。でも、ちょっとした時間を見つけて本を開く幸せもいいもの。晴れても降っても…。 だから「晴読雨読」。

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