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ジュリー・ロンドン 「彼女の名はジュリーVol.1」
クールな魅力は時代を超えて
東芝EMI TOCJ-6803 ¥1,500(Tax in)
東芝EMIは6月から「ジャズ決定盤1500」シリーズを発売している。東芝EMIMが所有するレーベルの中からジャズの基礎的な作品をピックアップ。1500円という廉価で提供するものだ。

このあたり東芝EMIは資産の活用がうまい。同社はブルーノートレーベルの作品についても同様の廉価シリーズを発売したが、一方でエンジニアのルディ・ヴァンゲルダー本人が音質調整した紙ジャケットシリーズをマニア向けに出し、他方で廉価盤を出してすそ野を広げようとした。

今回もギターとピアノという本来デュエットが難しい楽器同士の硬質な対話を記録したビル・エヴァンス&ジム・ホール「アンダーカレント」やトランペット奏者、チェット・ベイカーの歌手としての代表作「チェット・ベイカー・シングス」、あるいは天才のピアニスト、バド・パウエル「バド・パウエルの芸術」など、いわゆる名盤がずらりとそろっている。

これらの作品は“別テイク”入りのものや紙ジャケット盤なども出ているが、ブルーノートシリーズのときと同様別テイクのおまけなどは入っていない基本的な内容で、しかし廉価で楽しんでもらいたいという体裁になっている。

さて、僕はどれを聴こうかなと迷った末に選んだのが歌手、ジュリー・ロンドンの代表作。ハスキーな歌声はグラマラスな容姿にイメージ的にぴったりで、ダークな雰囲気の「クライ・ミー・ア・リバー」が中でも有名だけど、ほかの曲も負けず劣らずのできばえ。

その雰囲気のよさはもちろん声と容姿だけのたまものなんかではなくて、選曲の妙とも相まってのこと。つまりただの美人歌手のムード一発の作品などではなく−−それなら歴史に残っているはずもない−−音楽性も高いということ。たとえばギターとベースだけの伴奏でスローな曲を堂々とうたっている。簡単そうで簡単なことではない。

秋から冬にかけての季節に聴くのが似合いかなと思っていたけれど、今回長梅雨のさなかに聴いたら思わぬ音楽のクーラーとなってくれた。1955年だから半生記も前の録音で、音はちょっと古くさいかもしれないけれどクールな魅力は時代を超える。(ENAK編集長)

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彼女の名はジュリーVol.1





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