上妻宏光インタビュー［２］
||秒単位の微調整
−−多重録音だから、ひとりで重ねてもよかったのでは？
ひとりでやると演奏がそろいすぎてしまう。他人同士だとリズムに微妙なズレが生じる。そのズレが実は音に厚みを加えます。

−−それが「天翔る鳥」という曲
従来のスタイルよりひねりを加えた曲を提供したいと思って演出の方（謝珠栄）と相談してできました。３つのパートから構成されています。激しい部分は戦闘シーン。

−−舞台用の曲作りの手順は
おおまかなあらすじはもらいましたけれど、最初のうちはとても抽象的なやりとりが続きました。「この場面は、『シュー、ドーン、ガーッ』という感じです」とか。長嶋茂雄元巨人軍監督のような表現の仕方で。できあがっていないストーリーに肉付けする作業だから、そういう擬音的な表現になったのでしょうね。ストーリーのかけらをつまみながら、意見交換をして作ったんです。

−−大変そうですね
ある程度のたたき台を作ったら、これを演出に合わせて微調整する作業でした。「あと10秒長くして」とか秒単位で曲の長さを調整しなくてはならなかったのが大変でした。録音スタジオに入ってからも何度も注文がありました。疑問もありましたが実際の舞台を観て、なるほどこの人が振り向いたときに、こう動くからこうなるのか−−という具合に、注文の意図は分かりましたけれど。

−−なるほど
けいこの段階で、僕の生演奏を生徒のみなさんに聴いてもらったりもしました。

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