小林公一 日生劇場公演は2002年以来これで6作目になります。大劇場公演とはひと味違うものをお見せしたいと思っています。今回の作品は宝塚が日本初演になりますので、宝塚の可能性を感じていただきたいと、轟悠をはじめ星組生がはりきっています。9月は東京・日比谷界わいを宝塚一色に染めたい。
谷 正純 「キーン」のミュージカル版は、日本初演になります。アレクサンドル・デュマの原作をジャン・ポール・サルトルが翻案し、ストレートプレー版は江守徹さんが一度上演しています。
エドモンド・キーンは日本ではなじみのない人物ですが、ロンドンではサルトル版が5月末から上演されるなど英国では有名です。曲もすばらしい。
では、宝塚版をどうするか。シェークスピア劇が出てきますが、それは宝塚バージョンにアレンジします。ストレートプレーは宝塚が不得意としているのですが、芝居とオペラの歌とバレエの要素をちりばめれば、宝塚らしいシェークスピアをやれると自負しています。
日生劇場公演はこれで通算6回目ですが、私は最初の「風と共に去りぬ」をやらせていただきました。フィナーレなしで芝居中心でどれだけのものができるのかの挑戦でした。
ちょうどデュマがキーンという役者を想定して原作を書いたように、私は轟のすばらしさを存分に見せたいと考えています。柚希はこのところスケールの大きさと実力を発揮していますし、星組のメンバーとともにこの作品を作り上げたい。
−−劇中劇でシェークスピアの作品が出てくるそうだが、具体的には?
谷 幕開けに「ハムレット」が出てきます。ハムレットが死んだというところから始まるのです。メーンは「オセロ」。キーン(轟)とプリンス・オブ・ウェールズ(柚希)は身分が違うのですが、遊びを教えるのがキーン。飲み歩いて破産寸前。そんなふたりが女性をとりあう。そこにかかわる役者志望のエレナ・デ・コーバーグ(南海まり)。その三角関係と後半に出てくるキーンをめぐる女の三角関係。キーンとアンナ・ダンビー(蒼乃夕妃)が「オセロ」を演じている劇場のボックス席でプリンスとエレナがいちゃついて、それを見たキーンが芝居をやめてしまう。シェークスピアの劇中の人間関係と実際の関係とが同時進行するのが楽しみ。
−−なぜ今「キーン」なのか?
小林 今年も日生劇場公演ができるということで、作品を何にしようかといろいと考えて、米国側と相談する中で出てきたのがこの作品でした。シェークスピア劇を演じながらミュージカルでもある。難しい作品であるけれど、歌劇団の今後の成長を考えたら、この作品で行くべきかと。そういう作品であるからこそ轟が主演にぴったりだ。私としてはベストの作品だと思っています。
谷 著作権の問題もありますけれど、この作品があるとか、日生があるとかいうことよりも、私としては轟と久しぶりに芝居がしたかったというところでしょうか。いうならば「キーン」であることより日生であることより、轟と芝居ができるのがうれしい。
−−「キーン」の魅力は?
谷 キーンはシェークスピア芝居と現実との区別がつかなくなる。役者バカという言葉があるけれど、芝居に夢中になったらどうなるか。宝塚を愛し、夢中になっている轟をそこに重ねるとおもしろいかと思っています。
−−そもそもどんな作品ですか?
谷 歌と踊りの曲はすべてて30ぐらい。音楽自体はフルオーケストラが似合う曲想です。だからオペラに近いミュージカルだと思っています。全体に弦楽器の印象が強い。私も生の舞台は見たことがないのですが、CDで実況録音を聴いた限りでは弦楽器がメーンでした。