SUMiRE STYLE    010710    

  紫吹淳は理想の男役   演出家が語る
月組「大海賊」「ジャズマニア」制作発表[5]


 「ミュージカル・ロマン『大海賊--復讐のカリブ海』」の作演出を担当する中村暁

   17世紀後半のカリブ海を舞台にした海賊の物語です。復讐の物語とラブストーリー。主人公のエミリオというのが紫吹淳ですけども、復讐の思いが少年のエミリオを大人の海賊に変えていく。その少年が海賊となって復讐を果たした後、復讐のむなしさを知り、愛するひとを失ったときにもういちど主人公に海の男として生きろと促すのは、海賊の仲間たちであった。そんな海賊たちの自由を求めて生きる姿とか、うっ積する感情を解放する躍動感みたいなものをこの紫吹淳の海賊姿で描いてみたいなと思っています。

---以下、スライドで衣装、場面、緞帳などを13点のイラスト使って説明---


Q   紫吹さんの魅力は


 海賊という姿で男役の情熱とかロマンとかをこう、感じさせる姿、衣装、どんなものかなと考えたときに海賊のブラウススタイルで赤いサッシを巻いて黒いズボンでという姿が男役の情熱とかロマンを表すときにうまくいくんじゃないかなというのがいちばん頭にありましたね。それが紫吹淳が海賊スタイルになったときにこうなんだっていうふうに納得したり、男役の美学が見せられるんじゃないかなっていうのが頭にありました。

 もちろん紫吹淳のダンスをプロローグにぶつけますので、そこをみてください。


 「グランド・ショー『ジャズマニア』」の演出を担当する三木章雄

 この『ジャズマニア』という作品は去年、月組が宝塚大劇場で上演しました。で、テーマはジャズで、唄も踊りもジャズの曲を中心に作ったショーでした。

 ショーで1年近くたって再演するのはなかなか珍しいパターンで1年ていうのは短いようで宝塚にとっては長い期間でその間に、生徒たちも伸び盛りの人たちがそろっていますからどんどん変わっていきます。

 実際、こんどのようにトップのコンビがまるまる変わってしまうというような形でやるのもとっても珍しいと思います。

 それから、専科の(特別出演)初風(緑)くんは前も出ていたんですけど、湖月(わたる)、伊織(直加)という新しい人たちも加わりましたので、基本的には大きな場面に関しては流れとか衣装とか音楽はそんな大きくは変更はしないですけども、当然役割を担っていく中心となる人たちが変わっているので振りとか、そういうことも変更していくつもりです。

 小さい場面に関しては紫吹淳でこんどいちばんの目玉として考えているのは、後半でブルースをひとりで、星空の中でひとりだけで舞台で踊り抜くというのをやってみたい。黒燕尾を着ます。

 紫吹淳の生い立ちといいますか、花組で育った人です。そして、花組というのは大浦みずきとか安寿ミラとか、踊る人がトップで、そして黒燕尾がとっても板につく、とっても宝塚的男役を生んできた組だと思います。

 紫吹淳もその流れをずっとくんできて、星、月ときていますが、彼女のもっているよさはそういうところに集約して表現できるのではないかという思いがあります。そういう意味ではやはり、踊る紫吹淳をクローズアップしていくように作っていたきたなと思っています。

 映美くららさんと、コンビということで2人で一緒に歌を歌ったりするところもあるのですが、こんどは「Our Love Is Here To Stay」という、これもスタンダードの曲ですが、これを使おうと思っています。「わが愛はここに」とか、いろんなふうに訳されていますけれども、2人が出会って世界がつぶれても私たちはずっと愛し合っていくのよというようなスタンダードの曲で、2人のスタートみたいな気持ちも込めて歌えるんじゃないかなと思っています。

 紫吹淳を中心に新しい月組になっていくと。それからこの1年間で月組の若手たちの成長がはっきりごらんいただけるように構成、演出していきたいと思っています。

   13日からけいこに入るんですが、夏はいい汗かいて東京ではみなさんによいものを見ていただきたいと思ってがんばります。

Q   紫吹さんの魅力は


 男役っていうのは「男を演じる役」という意味では宝塚独特のものでありますし、伝統もありますし、ずっとある種の様式みたいなものも生まれていると思います。ショーのほうでいえば、いままさにっていう生ものの部分と伝統の部分とのバランスが、大事で、伝統だけではいまの若いお客さんたちをひっぱっていけないでしょう。そういう意味で紫吹淳っていうのは、両方もっていると思います。

 たとえば、黒燕尾とかで立ってパッと写真でも撮る。立っているだけで動かなくても端正なプロポーションだとか品の良さとかを感じさせます。同時に動いて踊ったときにとってもワイルドなものを感じさせるものももっていると思うんです。その間をいったりきたりするのが基本的に宝塚の男役の魅力だと思うんで、そういう意味で理想的--というとほめすぎかも分からないですけれど、堅いだけじゃ、といって軟らかいだけじゃといった意味のバランス感覚のとってもある人だと思うので、ひとり作家としてみればほんとうに仕事のしがいのあるスターが生まれたなあと思っています。



石井健@産経新聞Web編集部    




中村暁
三木章雄
会見終了後の記念撮影
『大海賊』の主題歌「心がふるえるとき」を歌った紫吹と映美
新生・月組を代表する顔
>>会見概要
>>公演概要






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