「退団を発表して本当にスッキリしました」と、さわやかな笑顔を見せた。宝塚のトップスターは就任した時点で退団の時期を考えるという。トップになるまで16年間の紆余(うよ)曲折があったタータンは、本公演がわずか2回だけの短いトップの座になるが、「頑張ってたってトップになれる世界じゃない。もうなれないと思っていたトップになれただけで十分です」と納得の決断だった。
「専科になったときに、いつやめてもいいと思っていたんです。21世紀になる前から宝塚もいろいろ変化しているし、他の組のトップも若返って新陳代謝も激しくなっている。私自身も舞台人として、新境地を開きたいという気持ちになってきたんです」
タータンが女優として“開眼”するきっかけは、専科時代に初めて外部出演してヒロインをつとめた、「天翔ける風に」の経験が大きいようだ。
「お芝居ってこんな楽しみ方もあるんだ、という新しい発見がありました。役者のプロのみなさんは私がどうぶつかっても支えてくださって、男役にとらわれずに女性としての感性で演じられた。あの経験がなかったら、退団して女優としてやっていくのが不安だったと思いますね」
ダンス、歌、芝居の三拍子そろったトップとしての実力をいかんなく発揮したのは、日中友好30周年を記念して9−10月に実施した第2回中国ツアー公演(上海、北京、広州)だろう。中国のファンにも「ハンサムでかっこいい」と大評判で、舞台を架け橋にした日中友好に大いに貢献した。海外公演は3度目だったが、今回は心に退団の決意を秘めてのツアーとあって、ひときわ思い出深いものになったという。
「私はもともと星組にいた生徒ではないので、3都市を回る間に組のみんなと交流や団結を深められて、毎日が修学旅行のように楽しかった。北京では大臣の方たちの前でスピーチをするという、一生の中でもめったにできない経験をさせていただきました。私にとっては最上級のごほうびで、あの1カ月間は何年分にも感じられましたね」
「過去を背負った役で、殺人事件も起きるんですが、謝先生は映画のような、きれいきれいなイメージの舞台を作られている。カンツォーネや美しい風景も楽しんでください」