晴読雨読
沖で待つ  絲山秋子  文藝春秋 952円
Op.(オペレーション)ローズダスト 大学卒業後、就職して福岡に配属された私。「名は体をあらわす」と言わんばかりの"太っちゃん"こと牧原太とともに。見知らぬ土地で社会人となり、営業に明け暮れるなか暗黙のうちに同期同士という結束が芽生える。30代になり、互いに関東地区に転属。そこで太っちゃんはある提案をする。どちらかが先に死んだとき、残された方が相手のパソコンのHDD(ハードディスク)を破壊する−。そして、そんなに間を置かずして、太っちゃんは不慮の事故で亡くなる…。

横並びでスタートを切った社会人生活も10年もすればそれぞれにさまざまなドラマが展開している。そんなころ、ふとこれまでを振り返りたくなったことはないだろうか。そんな時代の懐かしさと余裕が、さらりと、しかし温かく描かれている。恋人には頼めないけど同期になら話せる、というような感覚と信頼。

物語は著者の社会人経験とも重なり、バブル期を経験したメーカー・総合職・営業の女性の日常が正確におかしく描かれているのも魅力。

表題作のほかにもう1編「勤労感謝の日」を収録。36歳の、婚期を逃した女性の、世間のプライドと“闘う”心情が、小気味よく語られていて、ほんとうは笑えないのだけど、私は大笑いしてしまった!(R)

これまでに読んだ本
模倣犯容疑者Xの献身雪屋のロッスさんオペレーション・ローズダスト袋小路の男
晴読雨読(せいどく・うどく)は、ENAK編集部員が読んだ本を新旧問わず、気ままに紹介します。書評というより読書日記みたいなもの、でしょうか***晴れた日は田を耕し、雨の日は家で読書をする。そんな悠々自適な生活を意味する中国の故事成語「晴耕雨読」。あこがれるけど、現実はそうもいかない。でも、ちょっとした時間を見つけて本を開く幸せもいいもの。晴れても降っても…。 だから「晴読雨読」。

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