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プレミアム・ヴォイス〜ニュー・ジャジー・スタンダード
ジャズじゃなくて“ぽさ”でまとめたボーカル編集盤
ユニバーサル インターナショナル UICZ-1225 ¥2,400(税込)
なるほど、こういう企画もアリだなあ。

「ジャジー・スタンダード」。ジャズボーカルによるスタンダード集、ではなくて、ジャージーすなわちなんとなくジャズっぽいボーカルものを集めたコンピレーション盤だ。

幕開けはスティング「サムワン・トゥ・ウォッチ・オーヴァー・ミー」。ロック歌手がスタンダードナンバーをうたっているわけで、ストレートなジャズボーカルとはいえないが、雰囲気はたっぷりとそれらしい。

次にノラ・ジョーンズ「ザ・ニアネス・オブ・ユー」、ジェイミー・カラム「君にこそ心ときめく」が続く。ノラもジェイミーもデビュー当初は分かりやすく見せんがために「ジャズ歌手」と分類分けされたが、うたうほどにジャズでもロックでもない独特の音楽世界を提示した。

つまり冒頭の3曲だけでアルバムのムードは決定される。どんなムードかといえば、前述のように、これはあくまでジャージーな雰囲気を楽しんでもらいたいボーカルアルバムだということだ。そしてこの場合のジャージーな雰囲気とは、アコースティックんサウンドであるとか、リズムが少しだけスイングしているとか、あくまでその程度の話であり、しちめんどうくさいものなんかはないのである。

まあ、なんとなればジャンル分けなんていまは意味がないということを改めて示す意気込みが感じられる、なんていえるのかもしれないけれど、そんな難しいことを横においておいて、聞きやすくって雰囲気はばっちりな選曲なのだということか。

ダイアナ・クラール「レッツ・フェイス・ザ・ミュージック・タンド・ダンス」、ティル・ブレナー「アントニオの唄」、カエターノ・ヴェローソ「ダイアナ」はボサノバ調での演奏。小粋だ。

現代ボサノバのカリスマであるカエターノがうたう「ダイアナ」はロカビリーのポール・アンカが15のときに書いた大ヒット曲。そのアンカが、エリック・クラプトンの大ヒット曲「ティアーズ・イン・ヘブン」をカバーして掉尾を飾る。

クラプトンの本歌では展開部分でうたわれる旋律を、バースにもってくる構成。バースは米国のスタンダードにはよくある、歌の冒頭部分の旋律のこと。省いてうたわれることが多いが、バースからうたうととても丁寧にうたい込んでいる印象を与える。アンカは、本来バースのないクラプトンの楽曲にあえてバースをもうけ、ゆっくりとしたテンポで切々とうたいあげ、感動的にアルバムの幕を閉じる。

いずれも、それぞれのアーティストの既発商品から楽曲を寄せ集めただけだが、ロマンチックというキーワードの下に統一感のあるアルバムにしあがっている。 (ENAK編集長)

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