宝塚歌劇星組「エル・アルコン--鷹--」(齋藤吉正脚本・演出)「レビュー・オルキス--蘭の星--」(草野旦作・演出)東京公演が2日午後、東京・日比谷の東京宝塚劇場で始まった。

「エル・アルコン--鷹--」は、
青池保子原作の人気劇画をもとにした海洋スペクタクルロマン。16世紀後半のヨーロッパを舞台に、7つの海を制覇する野望に燃えるイギリス海軍士官のティリアン(安蘭けい)が、冷酷非道な策謀でのしあがり、敵国のスペインへ亡命するが、その果てには… という栄光と挫折が描かれる。
トップスターはほとんど演じない“ダーティー・ヒーロー”を、安蘭は漆黒の長い髪をなびかせたカッコイイ姿と抑えたセリフ回しで、じつに魅惑的に造形した。
安蘭は「主役ですから、どこまでできるか分かりませんが、東京公演では悪をもっとエスカレートさせたい」とワルにすっかりみせられているようす。
壮大な広がりを感じさせる主題歌(寺嶋民哉作曲)も、歌唱力バツグンの安蘭ならではのうまさで聴かせる。

ドレス姿に剣を持つ、フランス貴族の女海賊ギルダ(
遠野あすか)も、娘役トップとしては珍しい役柄。娘役ばかりの女海賊のダンスも目新しい。クライマックスは、ティリアンに父親を殺され、復讐(ふくしゅう)のために海賊となったイギリス青年ルミナス(
柚希礼音)との対決。荒海のCG映像をバックにした活劇シーンはなかなかの迫力で、まるで映画を見ているようだ。
「レビュー・オルキス--蘭の星--」(草野旦作・演出)は、かつて蘭の花が咲き乱れる美しい星(地球)で巡り会った男女が、今はもう花が咲かなくなった星に想いを馳(は)せる…という、社会的なテーマを秘めたドラマ性のあるショー。
いきなり老夫婦が登場するプロローグがユニークで、トップ・コンビの芝居巧者ぶりが光る。アルゼンチンから招いた振付家(オスカル・アライス)による、タンゴのイメージを超えるダンスの振付が新鮮だ。
安蘭は「いわゆるタンゴとは違う、バレエ的な踊りで、オスカル先生のおっしゃることに精いっぱい耳を傾けてがんばりました」と説明した。
黒い鳥に扮して踊る54人のラインダンスも圧巻。
この日は午前中に舞台稽古が行われ、稽古後に劇場内で
安蘭が記者会見した。
安蘭は「お正月の陽気な空気の中で、今年もがんばるぞと気持ちが引き締まる。舞台人としては、とてもすばらしい年明けを迎えられました」と、年頭からの公演に満足そうな表情を浮かべた。
東京公演は2月11日まで。